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2015年2月、惜しまれつつ宝塚歌劇団を退団した、元宙組男役トップスター凰稀かなめ。退団後、初コンサート『The Begining』を皮切りに活動を開始。年末には退団後初となるクリスマスディナーショー、写真集『IOLANA』の発売、更に2016年には、新世紀のフレンチ・ロックミュージカルとして大きな注目を集める『1789~バスティーユの恋人たち』のマリー・アントワネット役で女優デビューを控えている。
その歩みに更なる期待が集まっている女優・凰稀かなめに、ディナーショーを前にした現在の心境、女優として本格デビューへの思い、また退団後の時間の過ごし方などを語ってもらった。

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「今の凰稀かなめ」で臨むディナーショー

──宝塚退団後の初ディナーショーを控えて、準備はいかがですか?
一通りの流れは作れたところです。
──どんな内容になるかについては?
それは、お客様がご覧になってのお楽しみとさせて頂きたいです。
──いつもご自分をびっくり箱のような人間とおっしゃってますが、今回もシークレットなのですね。ではお客様にどのように観て欲しいなどは?
是非気楽にご覧頂きたいですね。特に私は宝塚在団中に1回しかディナーショーをやっていないですし、退団後、コンサートはさせて頂きましたが、ディナーショーはこれが初めてということになります。現役時代の「メタモルフォーゼ」というディナーショーも、今までやってきた方々とは違うディナーショーにしたいということで色々考えたものでした。退団後はお芝居が好きでしたから、お芝居をやってみたいという気持ちがあったものの、男役ではない自分がどんなふうになるのがいいのだろうとか、色々考えている中で、迷った時期もあったんです。でも今回はディナーショーですから、男役とか女性とかあまり考え過ぎず、自分の好きなものを組み込んだり、ファンの方が喜んでくださるようなカッコいい場面も入れたりできるので、それをご覧頂きたいと思っています。
──盛りだくさんな内容になりそうでとても楽しみですが、そうするとディナーショーであるからこそ、あまり女性としての部分は意識せずに自然体で?
そうですね。退団した直後は、歩き方は?とか声の出し方は?と考えたりもしたのですが、最近は無理に自分を変えることもないなと。今までの自分が自分ではなかったという訳ではありませんから、それを活かした状態での女性らしさが、そのうちに出てくるのかなと思っています。来年舞台をやらせて頂いて、初めて女性役を演じさせて頂きますが、その時の自分がどうなるのかはまだわからないので、今回のディナーショーでは本当にありのままの私、偽りもなくそのままの私でやっていこうと思っています。

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『1789』の世界ならではのマリー・アントワネット

──今、お話の出ました、その来年の舞台『1789』のマリー・アントワネット役ですが、フランス革命にはずいぶん縁がある形になりましたね。
宝塚の作品自体にフランス革命がからむものが多いということもあると思いますが、現役中に『ベルサイユのばら』もさせて頂きましたし、『グスタフIII世』にもフランス革命が入ってきていました。でも直接マリー・アントワネットに関わったのは、雪組にオスカル役で特別出演させて頂いた『ベルサイユのばら~フェルゼン編』の時ぐらいで、あの時は一瞬だったので(笑)、改めてマリー・アントワネットについてよく調べないとと思っているところです。
──そのマリー・アントワネット役を退団後の女優デビューに、と決断された決め手は?
もしも現役中に『ベルサイユのばら』のマリー・アントワネットを演じてくれと言われていたとしたら、断っていたと思います(笑)。でもフランス版の『1789』の映像や、月組さんの公演を観させて頂いて、フレンチ・ロックと呼ばれている少し現代チックな部分もあり、マリー・アントワネットがそんなに「お姫様」然としている訳でもないので、これだったら挑戦できるかなと。初めての女性役として出るにはちょうどいいのかな?と思って決めさせて頂きました。
──実際に扮装してみた印象はいかがでしたか?
わがままそうなお姫様だなと(笑)。マリー・アントワネット本人は、彼女なりに孤独であったり、寂しい思いもしたりしていたことも山ほどあったのだろうと思います。でも私は、貴族でも市民についたオスカルをはじめ、革命を起こす側の役が多かったので、市民側で考えるならひどい人だったというのもわかります。上に立つ人は下の人のことを考えないといけないのですが、彼女は自分のことしか考えていなかったのではないかと。幸い両方の気持ちが想像できるので、それを生かしてこれから作っていきたいと思いますし、自分のことだけではなく、『1789』は基本的に市民側の物語で、貴族側の象徴として私達がいるので、その対比をどう見せるか、全体的なバランスも考えて作りたいです。
──いよいよ女優として始動するということで、楽しみも広がりますが。
芝居をすることは苦しいことでもあるのですが、でも好きなのでやりたい気持ちは強いです。ただ、今回初めて男性の方とお芝居するということで、自分がどういう気持ちになるかわからないんです。マリー・アントワネットとして、男の人の前で面と向かって話したら、もとしかしたらすごく恥ずかしくなるかもしれませんし、逆に何も思わないかもしれません。本当にその場になってみないと自分の心がわからない状態なので、とにかくやってみて、フェルゼン役の広瀬友祐さんや、共演者の方達とやりとりをする中で感じていきたいですね。小池徹平さんのロナンと加藤和樹さんのロナンという、Wキャストそれぞれで違った物語にもなると思うので、それに対して私も変えられたらいいなと思います。
──ご自身も花總まりさんとのWキャストですが、別の方が同じ役を演じるという機会は興味深いですか?
これまで私自身は役替わり公演を経験したことがないので、ご一緒にお稽古させて頂けるというところが楽しみです。花總さんは娘役でいらして、私は男役でしたから、お互いに全くタイプもキャラクターも違うので、とても面白いWキャストになるのではないかと思っています。
──夢咲ねねさんとの共演も久しぶりですね。
星組時代、1年10ヶ月一緒でしたから、それ以来ですね。オランプ役なので、一緒にからむことも多いので楽しみにしています。アントワネット役が直接芝居でからむWキャストは、オランプ役の神田沙也加さんと夢咲ねねさんだけですが、芝居は相手が変わると絶対に変わるのでそれもまた大きな楽しみです。

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初コンサート『The Begining』の思い出と写真集『IOLANA』

──退団後初コンサート『The Begining』から時間が経ちましたが、あの時もずいぶん思い切った、瓶底メガネをかけたキャラクターを演じられたりして、驚かされました。
結構、人気のキャラクターなんですよ(笑)。
──「付き人さん」ということでしたね。色々とグッズまで出ているそうですが、今振り返ってみてコンサートはいかがでしたか?
とにかく楽しかったです。演出家のTETSUさんが色々私のことを調べて、私が素敵に見える、カッコよく見える構成を作ってくださったので。私は宝塚では王子様系や中性的なイメージがあったと思いますが、お芝居が好きでコメディも好きなのに、やったことがなかったので、コメディがやりたいですと申し上げたら、色々と考えて作ってくださったのが「付き人さん」の場面で。自分でも新たな発見がありました。「あぁ、こういうのが好きなんだな」と。時期的にも、男役は少し残しつつということでさせて頂きましたが、良いスタッフさんと共演者に恵まれた時間になりました。
──コメディが好きという気持ちが、実際に演じられて更に深まったということですか?
そうです。現役中もずっとやりたかったのですが、回ってこなくて。先生方も苦しませたいと思われているのか(笑)、トップになってからもいつも悩んでいる役しか来なかったので、退団してまず挑戦したかったのがコメディでした。
──では念願の経験をされて、また幅も広がってきたと思いますが、その中で写真集も発売されます。撮影はどうでしたか?
ハワイでの撮影だったのですが、海での撮影で波が高くて少し怖かったのと、あとは正直戸惑いました。初めてスカート姿や、ドレス姿の写真を撮っているので、どういう風にポーズしていいのかがわからない状態だったので(笑)、そこがちょっと大変でした。
──普段はまだスカートは履かれていない?
見ての通りパンツスタイルです。どうしても勇気が出ないんです(笑)。スカートは持っているんですよ!いっぱい買ったんですけれど、勇気が出なくて(笑)。写真集では色々着たのですが、ポーズがわからない。どうしても足を開いてしまうんです(笑)。でも頑張って女性の部分も出していますので、是非ご覧になってください。舞台でもいよいよ女性役もやりますので、そろそろ勇気を出してスカートも履かないといけないなとは思っています。
──でも、自然体で良いと思いますよ。そのままで素敵な女性ですから。
そうなんでしょうか(笑)。まぁ、私が男役だったことをご存知ない方は、「ちょっと気の強そうな女性だな」(笑)くらいの感じで受け取ってくださるようですが、まだ自分の気持ちがついていけなくて、自分の中で戸惑っています。コンサートの時もそうだったのですが、男の人に手を出す仕草ひとつでも、委ねなければいけないのにこちらから差し出してしまうとか、女の子の前に行ったらついカッコつけてしまうとか(笑)。でも15~16年宝塚にいて、長く男役をやってきましたから、そんなにすぐには取れないでしょうし、それを無理に取る必要もないかなと。それプラスアルファで素敵な女性になっていけたらいいかな、と考えています。

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新たな時間の流れの中で、吸収する日々

──退団後、これまでと時間の使い方などは変わりましたか?
180度変わりました(笑)。でも何も予定がないからどうしよう?と思うこともなく、自然に過ごしています。とにかくよく寝るようになりました。それに舞台以外の仕事が多かったので、それに対する準備も結構大変でした。今はディナーショーや来年の舞台に向けてやっていかなければならないことがあって、レッスンも詰めていかなければいけないし、メンテナンスもしないといけない。1日1日が一瞬で終わってしまって、休日がない状態なのですが、でも自由に日々を送っています。ボーッとしたければ、ずっとボーッとしていますし(笑)。基本は家にいるのが好きなんです。退団してからテレビもよく観ますし、ドラマも観るようになりました。
──観劇にもよく行かれているようですが。
機会あるごとに行くようにしています。観劇は勉強になりますし、コンサートでしたら「あ、こういうこともやってみたい」という発見があります。基本的には勉強の為に行っていますね。もちろん楽しみたい気持ちもありますが、やはり、これを自分がやったらどうなるかな?という視点で観ていることが多いです。テレビドラマでも「どういうふうに芝居をしているのかな?」と思って観てしまいます。勉強するのが面白いんです。「この人の芝居はこうなんだ」とか、子役のお芝居には「あ~これが純粋なお芝居なのか」と思いますし、テレビにはテレビのお芝居があるので面白いです。私は舞台しかやったことがありませんし、特に宝塚は特殊な表現が必要な世界でしたから、そのまま外で通用するとは思っていなくて。ましてや男役でしたから、先ほども言いましたように、男性とお芝居をした時に、自分がどういう気持ちになるのかまだわからないのですが、こうなるのかな?と想像しつつ観ています。
──そこから新しく挑戦してみたいことや発見などもありますか?
色々とあります。それらを今回のディナーショーに取り入れたりしています。1つ1つが初挑戦なので、結構ドキドキしていますし、不安もありますけれど、楽しんでもらえるようにやっていきたいなと思います。
──今後に向けて、夢とかビジョンのようなものはありますか?
それが持てたらある意味で楽だろうなとは思うのですが、現役の頃からずっと言っているように、ゴールは決めずに前に向かっていきたいです。その代わり遠回りもすると思うのですが、でも遠回りした分見えてくるものは違ってくるとも思うので、ゆっくり行こうかなと思います。
──では、まず直近のディナーショーに向けて、改めて意気込みを。
退団後初めてのディナーショーですから、とても緊張していますし、まだまだこれからお稽古で詰めていかなければならないのですが、確実にファンの方に楽しんで頂ける流れにはなっていると思いますので、とにかく皆さんに楽しんで頂けるように頑張ります。

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おうきかなめ○神奈川県出身。00年に『源氏物語 あさきゆめみし』で宝塚歌劇団で初舞台。雪組で活躍したのち、星組、宙組と二度の組替えを経て、12年『銀河英雄伝説@TAKARAZUKA』ラインハルト・フォン・ローエングラムで宙組トップスターに。『うたかたの恋』のルドルフ皇太子『風と共に去りぬ』のレット・バトラー『ベルサイユのばら』のオスカル・フランソワ・ド・ジャルジェと、宝塚の財産とも言える役柄を次々に好演する一方、『モンテ・クリスト伯』のエドモン・ダンテス、『ロバート・キャパ~魂の記録』のロバート・キャパなど、宝塚の世界を更に広げる挑戦的な役柄でも大きな成果を残した。15年2月『白夜の誓い~グスタフIII世、誇り高き王の戦い』『PHOENIX 宝塚!!~蘇る愛~』で惜しまれつつ宝塚を退団。同年4月、新たなスタートとなる初ライブ、凰稀かなめ『The Beginning』で始動。退団後初ディナーショー、写真集『IOLANA』の発売に続き、2016年4月~6月にはミュージカル『1789~バスティーユの恋人たち』のマリー・アントワネット役で女優デビューが控えている。
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