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初の女役を告げられ「頭が真っ白になった」という七海ひろき(撮影・外山哲司) |
宙組ミュージカル「ヴァレンチノ」(8~20日=梅田芸術劇場シアター・ドラマシティ)で、入団9年の男役・七海ひろきが初の女役に挑戦する。宙組トップ大空祐飛がサイレント映画時代のスター俳優、ルドルフ・ヴァレンチノにふんし、七海はその妻、ナターシャを演じる。美しく仕事ができる「イイ女」。コツコツと積み上げた男役のキャリアからにじみでる格好良さを生かし、女性もあこがれる女を演じる。東京公演は26日~4月2日、日本青年館大ホール。
涼しげな目元に、穏やかな笑顔。春の日だまりのようなたたずまいだ。七海はもともと、我の強いタイプではない。「もっと自信を持てとか、ガツガツしなさいって、言われるんですけどね」。マイペース。1歩1歩、焦ることなくキャリアを積み上げてきた。
ただ今回、演出の小池修一郎氏から初の女役を告げられたときは、頭が真っ白になったという。「びっくりし過ぎて、ドッキリじゃないかって疑いました」。
身長は173センチ。トップスター大空の170センチよりも高い。自分に女役が来るとは思ってもみなかった。明日海りお(月組)ら、女役経験のある同期生からアドバイスを受けて、ようやく落ち着いたという。
「同期からは『小池先生、チャレンジャーだよね』って。それと『とにかく、あんまり女役だって意識して、考えない方がいいよ』とも言われました」。
キャリアに生きるナターシャは女役だが、男役としての経験を生かせる役柄でもある。まず、小池氏からは「身長は意識するな」と指導された。自らも実在したヴァレンチノの妻、ナターシャを調べてみると、大柄な女性だったことが分かり、納得した。性格面での不安も減った。
「仕事に生きる女性なので、かなり男っぽい面があるんですよね。家庭は二の次。ヴァレンチノとも対等で、パートナーのような感じだった。互いの才能を理解し合った上で、一緒にいるんです。いま、私も仕事の方が好きですし。共感できる部分は多くありました」。
役柄をじっくりと理解し、頭の中にナターシャ像を作り上げた。そう。七海はずっとこうして、経験値を高めてきた。多くの団員が小学時代からダンス、歌のレッスンに明け暮れる中、七海は学生生活を満喫していた。運命を変えたのは、中学時代に見た、天海祐希主演の舞台「ミー・アンド・マイ・ガール」。そこから宝塚にあこがれ、ダンスを習い始めた。スタートとしてはやや遅めだった。
「だから音楽学校のときから、優等生じゃなかった。子供のころの方が活発。男勝りで、学級委員もやってましたし、勉強もスポーツもまあまあできた。宝塚に入ってから、私には子供のころからの蓄積もないし、井の中の蛙(かわず)だと、分かったんですよ」。
こんな風に冷静に自己分析できる能力が、彼女の強さでもある。新人公演初主演は、ラストチャンスの研7(入団7年目)。それでも「同期と自分を比べたこともなかったですね。そういう部分では、のんびりしてましたから」と笑う。
ライバルは他人ではなく、昨日までの自分。確固たる信念を持ち続けてきた。
「けいこ場ではすべての自信をなくし、舞台に立てばそれを取っ払うというのが、私の身上なんです。けいこでは、ちゃんと反省できる人でありたい。これでいいと思ったら終わりじゃないですか」。
内に蓄えた力を、ひそかに燃やしてきた。新境地で始まる今年、何かが変わる。
「バラエティー豊かな役作りができるようになりたいんです。女役でも、1人の人間を演じることに変わりはない。せっかくのチャンス。『こういう役もできるんだ』って思っていただけるように。新たな扉が開いたら『よっしゃーっ』じゃないですか」。
こう口にしつつガッツポーズも出た。転機の年になりそうだ。
◆宙組ミュージカル「ヴァレンチノ」 1920年代に活躍した映画スター、ルドルフ・ヴァレンチノを描いたミュージカル。宝塚では、86年に杜けあきを中心とした雪組で上演され、92年の再演では高嶺ふぶきがナターシャを演じた。物語は、新大陸で農園を経営する青年ルディー(後のヴァレンチノ=大空祐飛)が、作家ジューン(野々すみ花)と出会い、銀幕スターへと駆け上がる様を描く。作・演出は小池修一郎氏。
☆七海(ななみ)ひろき 1月16日、茨城県水戸市生まれ。県立水戸二高を経て、03年「花の宝塚風土記」で初舞台。新人公演の主役ができる最終年であった7年目、09年「薔薇に降る雨」で新人公演に初主演。身長173センチ。愛称「かい」。
「プレシャス!宝塚」は、日刊スポーツ(大阪発行版)に連載中です。

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