写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

宝塚時代、二枚目からコミカルな役まで演じられる実力派として観客を魅了した緒月遠麻が、ジェットラグプロデュース「罠(わな)」に主演する。スターファイルでは、意外にも「罠」が初主演という緒月にお話を聞いた。インタビューは、「罠」出演を控えた今の心境から、宝塚を卒業してからの充実の時間、さらには役者としてこだわってきたことにまで及んだ。(演劇ジャーナリスト・中本千晶)

 じつは今回の話、一度は断ったという。「自分は支える気質」だという緒月は、主演と聞いて「私には向いていないな」と思ったそうだ。ところが、あらすじを読ませてもらうと「役者魂」に火がついてしまった。主演への不安と作品の面白さ、両者を「天秤(てんびん)にかけた結果、役者が勝っちゃった」、それで引き受けることにした。

 それだけに今回の作品への思い入れは強い。「罠」というタイトルのとおり、だましだまされ、思いがけない展開が続く。緒月も「台本を読み進めるたびに『ええっ!』と叫んでしまった」そうだ。だが、サスペンス風味かと思いきやコミカルな部分もあり、緒月の持ち味も発揮されそう。緒月演じる女優の役も、当初はクールなイメージだったのが、だんだん緒月本来のキャラクターに近づいているのだという。

 「ニジンスキー」のセルゲイ・ディアギレフ、「翼ある人びと」のロベルト・シューマン、そして「銀河英雄伝説」のヤン・ウェンリーなど、振り返ってみても印象的な役が本当に多い緒月。今回の「罠」のオファーも、プロデューサーが「ベルサイユのばら」のアンドレを見て一目ぼれしたのがきっかけだったという。常にマイペースで役に真摯(しんし)に向き合って来た印象があるが、やはり「自分をスターだと意識したことはない」。「宝塚のスターシステムに翻弄(ほんろう)されたことは?」と聞いても、「全然。戦ってきた相手はいつも自分でした」ときっぱり。

 いっぽうで「客席を見るのも恥ずかしかった」というシャイな部分もあり、「男役として、もっとお客様の期待に応えられたらよかったかな」とも振り返る。だが、先日出演した舞台「希望のホシ」では、男役の殻を脱ぎ捨てられたためか初めて客席をしっかりと見ることができて、「男役ではない自分を応援してくれる人がこんなにいるということが、すごくうれしかった」と話す。

 今年の2月に宝塚を卒業してから、朗読劇、2度のディナーショー、「希望のホシ」での石原軍団との共演と、「濃い日々」が続いている。「私の宝塚卒業って、本当に今年だったのかな?」と感じてしまうほどだ。ブログも始めたが、「私=おづき。」というユニークなタイトルにも、役者として自分を偽らず、人に流されることなく、変わらずやっていきたいという思いをこめたのだという。

 「私の勘はよく当たるんです」と自認する緒月が「絶対に面白い」と太鼓判を押す「罠」。宝塚卒業後も「役者」としてさらなる進化を続ける緒月の新たな挑戦が楽しみな一作になりそうだ。

〈緒月遠麻さんプロフィル〉
 名古屋市出身。2000年宝塚歌劇団入団。「源氏物語 あさきゆめみし」で初舞台を踏み、雪組に配属。「ロミオとジュリエット」「ニジンスキー」などに出演後、12年に宙組に組替え。「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」「モンテ・クリスト伯」「翼ある人びと」「ベルサイユのばら」などに出演。15年「白夜の誓い」で宝塚歌劇団を退団。退団後は、朗読劇「約束」に出演し、ディナーショーも開催。10月には退団後の初舞台「希望のホシ」に出演した。

(1)だましだまされ……どう演じようかと今から楽しみ

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――後ろにもポスターを貼っていただいた「罠」、まずは公演のご紹介をお願いします。

 5カ月ぐらい前に、あらすじを読ませていただいて、すごく面白かったんです。和菓子屋さんでお茶しながら読んでいたのですが、自分が「こう来るだろうな」と思ったことが、ことごとく外れていって「ええっ!」と言いながら読んだのを思い出します。

――和菓子屋さんでお茶しながら読んでたんですか?(笑)

 そうなんです。それで面白くて、ぜひやらせていただきたいなという思いで今ここにいるんです。

――サスペンスものなんですか?

 でも、ストレートにそれだけではなくて、コメディーの要素も入っています。「罠」という題名のとおり、だましだまされといった感じです。

――緒月さんが演じられるのはどんな役なんですか?

 女優で、結婚の届け出を明日に控えた女性です。そこからいろいろと事件が起きるのですが……。

――殺人事件に巻き込まれたり?

 巻き込んだり巻き込まれたり、だましたりだまされたり。本当に駆け引きがすごくて、役の中で女優な自分が「だます」ときはどう演じようかと、今から楽しみで仕方ないんです。

――どんな人なのですか?

 クールな感じなのかなと思いきや、面白い人でもあるみたいです。落ち着いていて姉御肌ですが、ちょっと抜けているところもあり、いろんな顔を持っていますね。あて書きしてくださった部分もあって、作家さんとお会いしてから、だんだん私寄りのキャラクターになったらしいです。でも、自分に近いって一番難しいんですよね。

――同じ宝塚ご出身の華耀きらりさんとも共演されますが。

 宝塚時代は組も違っていて共演したことはないですが、舞台を見に行くとすごく惹き付けられる人でした。芸達者でしっかりしているし、でも素は面白いし、最高じゃん!っていう感じです。他の方たちがどういう方なのかも今から楽しみですが、きらりの場合は舞台も見ているし人柄もわかっているので、安心して一緒にお芝居ができますね。

(2)宝塚での「芝居の在り方」は間違っていなかった

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――じつは先日「希望のホシ」を拝見させていただいたんです。

 そうですか! ありがとうございます。

――男性の中に入っても全然負けていない感じでしたが……。

 いや、負けてられないですね(笑)、あの役は。

――終わってみていかがでしたか?

 本当に伸び伸びとできる演じやすい環境を石原プロの方々がつくってくださったので、退団してから一作目の舞台として、とてもいいスタートが切れたなと思います。

――一番得られたものは何ですか?

 宝塚でやってきた芝居の在り方は、正しかったんだなと思えたことです。

――そうなんですね!

 芝居の作り方とか、人とのコミュニケーションの在り方とか、意識して宝塚と変えなければいけないことが、なかったんです。ひとりの役者として、自分を変えずにバーンとぶつかっていくことができました。

――それは面白いですね。わりとそこで悩まれる方が多い印象があるのですが。

 もちろん、まったく悩まなかったということはないですけど、ポスター撮りのときに皆さんとお会いしたときに、「ああ、すごく芝居がやりやすそうな方たちだな」と安心して、そこでまず自分の心配事がひとつとれて、集合日に台本を読ませていただいてまたひとつとれて、そういう感じでお稽古を積み重ねていくうちに、心配事は全部とれて、結果としてすごくお芝居がやりやすかったです。そもそも石原プロで刑事物っていう時点で、テンションが上がっていたというのもありましたね。

――宝塚のOGの方にこうやってお話をうかがうと、男役を極められた方ほど、辞められてからいろいろ考えたり、リハビリ期間が必要だったりする方が多い印象がありますが、緒月さんはいかがでしたか?

 もちろん「オフでスカートをはく」とか、そういうリハビリはすごく必要でしたが、役を演じるときのリハビリはあまり必要なかったですね。宝塚時代に「風と共に去りぬ」(2013年)のベル・ワットリングをやったときも、お稽古着でスカートやレオタードをはくことには違和感があっても、役作りの根本は変わらないなと思ったんです。性別が変わっても演じるのは私だし、そういう部分は柔軟にいけるタイプみたいです。

――これからも役者さんとしてやってくことは、すんなりと決められたのですか?

 はい。あまり固く考えないので……考えろっていう話ですが(笑)。

――では、今年の冬にご卒業されてから今までというのは、緒月さんにとってはどんな時間でしたか?

 「まだ1年経ってないの?」という感じですね。朗読劇から始まって、ディナーショーが2回あって、「希望のホシ」があって、そして今回と、すべてが濃すぎて充実していたので、「私の宝塚卒業って、本当に今年だったのかな?」という感じがするんです。

――そうすると、イメージとしては「宝塚」という時代は終わったけれど、役者さんとしての濃い日々はずーっと続いている感じ?

 そうですね。でも、宝塚時代は本当にありがたいことに、ひとつの公演が終わったら次の公演のお稽古という日々を送っていましたから、今のほうが気持ちのゆとりはできました。宝塚時代も今も、同期とはよく遊んでいますが、リフレッシュの度合いが違うといいますか……それに宝塚時代はやっぱり街を歩いていても「宝塚の人だな」という目線を感じたりして、あまりワーッとはしゃげない部分もありましたが、今は少しずつ自由にさせてもらってます。

(3)私はちゃんと「おづき」でなきゃいけないと思った

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――ブログも拝見しましたが、だいたいそれを読んだだけで楽しそうだなというのは伝わってきます。

 楽しいですね! すみませんね~申し訳ない(笑)。

――どんな風に書いてらっしゃるんですか?

 思ったままです!

――思ったまま?

 あまり意識せず、ストレートに、そのとき思ったことを書いてるだけなんです。

――書くのは楽しい、ですか?

 そうですね。意外だねって言われます。ブログを始めた時点で「意外だね」と言われたし、マメに更新しているから「意外だね」とも言われるし。でも、一回やりだすと無駄にこだわっちゃう部分があるんです。「歌劇」の“絵と文”のコーナーも、依頼が来たときは「うわー、もうやだ!」と思ったのに、書き始めると一日それに費やして、何回も書き直したりして。それが今回のブログにも出ていますね。

――ひそかにこだわってらっしゃることはあるんですか?

 偽らないこと。自分を美化しないこと。もともと美化するクセはないですが、でも、始めたころは見てくださる方に「何だこれ?」と思われないように、いろいろ考えなきゃと思ったんです。でも、感じ方や受け取り方は人それぞれだし、どう受け取っていただいても「これが私ですから」という風に気持ちを切り替えました。

――「私=おづき。」というタイトルが、これまたユニークですが、どうやって決めたんですか?

 この活動をする限り、私は「おづき」だなと思ったので(笑)。

――それはどういうこと?

 舞台は好きだったけれど、辞めてからここまでがっつりやるとは自分でも思っていなかったんです。でも、いただいた役をしっかりやるために、私はちゃんと「おづき」でなきゃいけないと思ったし、ブログを始めるということはそういう道を選ぶということだと思ったので、「私はおづきだ」ということで、この題名にしました(笑)。しかも、意外と考えずにサラッと出た題名でしたね。

――「おづき」の条件は何ですか?

 ずっと変わらない。人に、左右されない。流されない。でも、流されなさすぎて頑固なんです。だから、頑固な部分は直しつつ……いや、でも直らないですね。小学校の先生からも「変わってないね」と言われますから(笑)。これでも大丈夫みたいなので、いい意味で自分を貫き通したい、変わらずいたいなと思います。


(4)思い立ってウィンクしてみたら、客席が……!!

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――とても柔軟でいらっしゃるように見えつつ、でも「頑固なんです」とおっしゃるのは、不思議な感じがします。

 気質的に私は、支えるほうが好きなんですよ。なので、今回すごく気負ってます。ドキドキしてます。

――どうしてですか?

 いちおう自分が芯なので、「できるのかな?」と思って。じつはこのお話、最初はお断りしたんです。自分のことは自分でわかるので、「私は向いていないな」と思ったので。でも、あらすじを読ませてもらったとき、「面白そう!」と役者魂に火がついてしまい、天秤(てんびん)にかけたんです。「自分が主演で大丈夫だろうか?」ということと、「本が面白い! 役者としてやってみたい!」ということと。それで役者が勝っちゃったんです。

――すごい! 緒月さんをそこまで動かした脚本、楽しみです。

 そうなんですよ。でも、みんなが主役ですから! 私は年長っていうだけ。

――じつは宝塚時代の緒月さんの舞台を昔からずっと拝見させていただいていて、「猛(たけ)き黄金の国」(01年雪組)という作品で、坂本竜馬にハリセンで殴られる海援隊士をされていたころから「面白い人だな」と思っていたんです。

 古い! 古い~!!

――そういう面白い役も多かったじゃないですか。でも、カッコいい二枚目もできる、宝塚的にいうと稀有(けう)な存在でいらっしゃったと思いますが、ご自身の意識としては、自分は二枚目? スター? 何だったのでしょうか?

 スターと意識したことは1回もないです。でも、自分がその役を演じることで、その場面や作品のレベルを下げてはいけないという思いは、それこそハリセンのころからありました。もともと心配性だし自信もないので、どうやったらこの作品が良くなるかということを、微力な下級生ながらすごく考えていたのを思い出します。それは卒業するまでずっと変わらなくて、どうやったらお客様に楽しんでもらえるだろうかという意識のほうが強かったですね。だからやっぱり、支える気質なんです。

――スター制度に翻弄(ほんろう)されたりはしなかったですか?

 全然、全然! どんな役を頂いても楽しめました。あの状態で卒業できたのは奇跡としか言いようがなくて、「緒月にこういう役をさせてみよう」と思ってくれた先生方のおかげです。あんなありがたい状態で卒業できたので、本当に何だか申し訳なくて。だからこそ、ちゃんと応えなきゃいけないし、応えるだけではなくてそれ以上のものを与えることができなくてはという、プレッシャーといいますか、恩返ししなければという思いが本当に強かったです。

――でも、宝塚という舞台はカッコ良さとか、お客さんを「キュンとさせる」ことも、すごく求められる場じゃないですか。そういう部分は?

 ……そうですね。みんなよく銀橋などでウィンクをするんですけど、私はあまりそういうことはしなくて、でも一度、ふいにウィンクをしてみたら、その後セリ下がったときに客席が「うわー!」とどよめいたんですよ。

――(笑)

 そこまで珍しいんだと思って、「もうやめよ」と思っちゃった。

――でも、それを見た人は?

 すごい、ざわついていました。それで「えええ?」と思いながらセリ下がっていきました。めったにしない人がウィンクをすると、こういうことが起こるという現象を味わって、やっぱりウィンクの乱用はいけないなと思いました。すべては心を込めてやらなきゃいけない、と。でも、そのときもたまたまやったわけではなくて「今日やってみよう」と、朝から思っていたんです。

――どうしてそう思ったのですか?

 毎回、安全パイでいるのもどうかなと。宝塚のお客様はリピーターの方が多いので、どうしたら楽しんでいただけるかと考えたときに、めったに私がしないことをやったらどうなるんだろう?と思ったんです。やってみたらすごい反響で、「また見たいです!!」といったお手紙もいただきましたが、「ああ……もう無理です」と(笑)。そういう、ちょっとシャイな部分もあるんですよね。

――その後、ウィンクはやったんですか?

 貸し切り公演などですね。男役という職業は、お客様に夢を見せないといけない部分もあるじゃないですか。そういう部分にもっと応えていかなきゃいけなかったんだなと、卒業してから思いました。客席も恥ずかしくて見られなかったりしたんです。でも、自分が見に行ったら、客席から見てくれるとすごくうれしかったので、やっぱりそういうことも恥ずかしがらずにやればよかったなと、思ったんです。

――なるほど……。

 でも、前回の「希望のホシ」では、やっぱり男役というものが何かひとつ脱げたので、客席もゆっくり見られたし、ファンの方々もたくさん見られたんです。男役ではない自分を応援してくれる人がこんなにいるんだということが、改めて、すごくうれしかったですね。

(5)似ているのはヤン・ウェンリー、競争がダメ

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――では、男役というものが脱げたところで、やってみたい役は、ありますか?

 「この人にこの役をやってもらいたい」というのを、受けてみたいです。「これは無理です、あれは無理です」とは、意外と自分では言わない気がするので。いろんな役をやってみたいですね。

――宝塚時代も、普通の人だとありえないような面白い役も多かったじゃないですか。「風の錦絵」(09年雪組)の巨大な小僧さんとか。

 はいはいはい、ありましたねー。面白いのは全部石田(昌也)先生ですね。ハリセンもそうですし。

――あ、そうですね。

 小僧さんも石田先生でしたし。石田先生はいつも何かをさせようとしてくださる方で、育てていただいた部分が多かったです。

――狙っていくというよりは、「いるだけで面白い」という役が多かったですよね。

 狙ったことは一回もないですね。とりあえず一生懸命やってるんですよ。真剣に、その役として。

――「それがどうして面白いんですか?」ということをお聞きしたかったんです。

 役を面白く作っているわけではなくて、もともとよく笑われるんですよね。子どもの頃からなぜか。

――そのなぜかについて、自分で思い当たるフシは?

 同期からもなぜか「しゃべっているだけで、やっぱり面白いよね」と言われて、「何なの? それは」と聞いたりもするんですけど、「そこがわかんないんだよね」と言われるんですよ。だから、何が面白いかはよくわからないのですが、そういう部分と「役者」がミックスして、化学変化が起こっているのかな。

――さきほど「自分に近い役が一番難しい」とおっしゃっていましたが、今まで演じられた役のなかで、自分に近いなと思う役は、どれですか?

 ヤン・ウェンリーです!(「銀河英雄伝説」12年宙組)

――そうですか! どういうところが近いですか?

 戦いは苦手、平和でいいじゃん……というところです。意外と平和主義で、争いというか競争がダメなんですよね。宝塚にいたのに何を言っているんだという話ですけど、自分の中では競争していたつもりはなくて、戦っていたのは自分とで、いつも自分がライバルでした。ヤンも戦いは嫌いで、ひとり後ろからみんなを見ているようなところが自分に似ていると思います。

――だから、競争社会の宝塚でも健全にやってこられたのでしょうか。

 もちろん人に恵まれていたのも大きいです。だから、焦りもしないし、宝塚生活15年を自分のペースで伸び伸びさせてもらっていましたね。とりあえず自分に必死でした。

(6)私の勘は当たる、この作品は絶対面白いと思うんです

2015年12月4日更新
写真:緒月遠麻=撮影・岩村美佳緒月遠麻=撮影・岩村美佳

――では最後に、たぶんこの記事を楽しみにされている方がたくさんいらっしゃると思うのですが、そんな皆様に今一番お伝えしたいことをどうぞ。

 コアな皆さんに?

――はい、コアな皆さんに(笑)。

 「希望のホシ」が終わったとき「次は『罠』がすごく楽しみです」というお手紙をいただいて、ポスターで宝塚ではありえなかったデコルテを出しているということでも、たくさんお手紙をいただいたし、いろいろな意味で皆さんが期待していらっしゃるのを感じます。それに、私の勘ってすごく当たるんですよ。怖いでしょ?(笑)。だからこの作品、絶対面白いと思うんです。

――今まで勘が当たったのは?

 「ニジンスキー」(11年雪組)です! 先生からさらっと聞いただけで「これはすごいだろうな」と思ったんですよね。そのとき私はディアギレフという役が同性愛者の役だということも、まだ勉強していなくてわかっていなかったんです。でも、これはいけるだろうという勘は当たったので、きっと今回も大丈夫だと思います。台本を読んだときから私はすごく手応えを感じていますし、皆さんの期待に応えられるように出演者一同でいいカンパニーをつくって楽しんでいけたらなと思っています。楽しみにしていてください。裏切りません!

――ありがとうございました!

<インタビューを終えて>
 伸びやかで楽しいインタビューだった。そして、いろんな部分で、これまでの男役スターさんのインタビューと違っていたのが興味深かった。お話を聞いているとタカラヅカのスターシステムのほうが小さなことのようにも思えてきた。そう感じさせる緒月さんこそが、ホンモノの「役者」なのかもしれない。

 「ナンバーワンよりもオンリーワン」――陳腐な言い回しで恐縮だが、お話をうかがって、オンリーワンな生き方の神髄を見たような気がした。これからはオンリーワン女優緒月さんの時代だ。ブレないこと、そして、自分を偽らないこと。それがオンリーワンな生き方の秘訣(ひけつ)なのだ。私もそんな風に生きていきたい! そんなことまで思ってしまった。私もブログのタイトルを「私=ちあき。」にしようかな……。

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