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宝塚きってのビジュアル系、宙組トップスター凰稀かなめが、トップ2作目「ミュージカル・プレイ モンテ・クリスト伯」(15日~4月15日=兵庫・宝塚大劇場)で、日本では「巌窟王」として知られる青年の復讐(ふくしゅう)劇に臨む。今回のテーマは裏切り。凰稀自身としても、ひげを着けた役柄で、スタイリッシュなイメージから一変。ショー「レビュー・ルネッサンス アムール・ド・99!!」は、創立99周年となる名作レビューへのオマージュ。情熱的な場面も多く、ショーでも新境地を開く。東京宝塚劇場は5月10日~6月9日。

 「銀河英雄伝説」の天才将校から、憎しみを糧に生きる復讐(ふくしゅう)の鬼へ-。凰稀がダークな主人公に挑戦する。ポスター写真ではひげをたくわえ、野性味を前面に出した。

 「もともと、ひげは着けようと言ってましたが、せっかくだから『すごいのを撮ろう』と…。じゃあ、前回とガラッと変えようと」

 凰稀演じる主人公のダンテスは、船長昇格を目前にした1等航海士。美女メルセデスとの結婚も決まり、幸せの絶頂だったが、周囲の嫉妬を買い、身に覚えのない罪により孤島へ流される。14年後、脱獄に成功。報復を繰り返していく。

 「それが…私、末っ子で、子どものころから、あまり怒るという感情がなかった。姉たちを見ていてある意味、要領がよく、人の顔色を見る子。何かを『してやりたい!』って強い感情がなく、どうすれば大人が喜ぶかを考えていました」

 報復経験はもちろん、その心、いや、怒りの感情さえ、ほとんどないという。

 「まったく想像できないんですよ。だから(今作を映像化した)映画を何回も、何回も、何回も見ています。(幽閉場面の)スープだけで生活するなどの実体験はできないし…」

 演出の石田昌也氏から借りた漫画も読んだ。もっとも、自宅で何度も映画を鑑賞していると「ドーンとなる(気持ちが沈む)」。役作りに没頭するあまり、体調の波が激しくなる。「体がフラフラしないようにするためには、とにかく食べ、寝ることしか」。そう言いつつも、秘策があった?

 「私、みんなが困っている顔、泣いている顔を見るのが結構、好きなんです。あははは。イタズラも好きだし。どちらかといえばSかな(笑い)。だから、おけいこもストレス発散かも。泣け! って感じで」

 満点のリップサービスで笑わせたが、その真意は、怒りを知らない自分の中にあるわずかな「黒い感情」を引き出すことにある。凰稀演じる主人公が報復に成功すれば、泣く者が出る。「自分(役柄)が最初にされていることで、その仕返しですけど、なんか楽しい。えへへ」。劇中には多くの裏切りがあるが、凰稀の新たな一面も、ファンへの良い意味での裏切りだ。

 「(演出の)石田先生は、役者の中身を掘り出してくれる人。どれだけ、自分をむきだしにできるか、挑戦ですね」

 前作「銀河英雄伝説」は、男役が近未来の兵士でそろい「男祭り」と称された。今回は嫉妬、裏切りと、人間の心の闇に迫る。「打って変わって、今回は悪人まつりです」と笑う。

 そして今回、トップ就任後初のショーがある2部構成。ショー「アムール・ド・99!!」は、宝塚99年の歴史の中から名作レビュー、ショーを中心に構成。情熱的なラテン系ナンバーが軸になり、凰稀はショーでもファンを裏切るつもりだ。

 「私のイメージって、たぶんバイオリン、フルートとか、そういう感じだとは思うんですけれど、今回は太鼓が多い。太鼓の似合う男役に。ショーでも、新境地開拓ですね」

 名作へのオマージュ。60年の初演で芸術祭賞を受賞した寿美花代の代表作「華麗なる千拍子」の名場面もある。「何年ぶりかに脚を出させていただきます」。いたずらっぽく笑うが、99年の伝統を背負う重みも感じる。「歴史を背負って歌う。すごい重み。でも、背負わせていただきます」。重圧の中、未知の自分を発掘する楽しみもある。

 4月には、雪組新トップ壮一帆の大劇場お披露目公演「ベルサイユのばら-フェルゼン編-」へ、星組トップ柚希礼音とともに出演し、オスカルを演じる。その後、オーストリア皇太子の悲恋を描いた名作「うたかたの恋」も控える。

 「オスカルも、うたかたの恋も、宝塚では誰もがやりたいあこがれの役。特に、うたかたは、私もずっとやりたくて。私の宝塚の原点になる作品だと思う」

 「うたかた-」は、宝塚音楽学校時代の発表会で経験があり、「ベルばら」は06年の雪組時代、新人公演でアンドレを演じた。いずれも縁がある。それを100周年への橋渡しとなる今年、自分が演じる。「奇跡のように思います。自分が今、この立場でここにいるのは、うれしいけど責任重大」。奇跡と称した運を引き寄せたのは、挑戦心ゆえ。今回もまた裏切る。トップに就いても、凰稀の姿勢は変わらない。【村上久美子】

 ◆ミュージカル・プレイ「モンテ・クリスト伯」(原作アレクサンドル=デュマ・ペール、脚本・演出=石田昌也氏)日本では「巌窟王」の題名でも知られ、何度も映画、舞台化されている。舞台は、19世紀初頭のフランス。若き1等航海士エドモン・ダンテスは、婚約者メルセデスとの結婚も決まり幸せの絶頂にあったが、無実の罪で孤島の監獄に投獄される。ファリア神父と知り合い、ダンテスは脱獄に成功。モンテ・クリスト島の財宝を入手し、仕返しを始める。

 ◆レビュー・ルネッサンス「アムール・ド・99!!-99年の愛-」(作・演出=藤井大介氏)99年の歴史の中で、宝塚歌劇が繰り広げてきたショー、レビューの名作、名場面の再演を盛り込んだステージ。

 ☆凰稀(おうき)かなめ9月4日、神奈川生まれ。順心女子学園中を経て00年「源氏物語 あさきゆめみし」で初舞台。雪組配属。05年「霧のミラノ」で新人公演初主演。06年「Young Bloods!」でバウ主演。09年4月に星組へ、一昨年2月に宙組へ移る。昨年1月、バウ主演公演「ロバート・キャパ 魂の記録」で、戦場カメラマンを熱演。同7月、宙組トップ就任。娘役トップには実咲凛音(みさきりおん)を迎えた。身長173センチ。愛称「かなめ」。

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    neko Chan 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()