宝塚元宙組トップスター凰稀かなめの退団後初の舞台、コンサート「The Beginning」が、東京と大阪で上演された。4月に行われた東京公演の模様をお伝えする。(フリーランスライター・岩村美佳)

 凰稀が「皆、びっくりすると思う」とインタビューで話していたが、「なるほど、そうきたか」と驚いた。英語の曲を歌い上げる女性アーティストといった感じの場面、宝塚男役を彷彿(ほうふつ)とさせる場面、タップダンス、緑のジャージー上下とビン底丸メガネ姿でのコント、マイケル・ジャクソンナンバー……と盛りだくさん。さらには映像でロリータ・ファッションにも挑戦している。

 終始、客席からは「キャー」と黄色い声が飛び、凰稀もそれを喜び煽(あお)る。コンサート会場が一体となり、新たなステージへと進んだ凰稀を受け入れ、おおいに盛り上がっていた。構成・演出はダンスグループBags Under GrooveのリーダーTETSU。出演は、凰稀の他、白華れみ、平澤智、IYO-P(Bags Under Groove)他。

(1)アーティスト凰稀に、客席はスタンディング

写真:「The Beginning」公演から「The Beginning」公演から

 舞台中央のスクリーンにシルエットが浮かび、スクリーンが上昇するとともに凰稀の姿が現れる。ボブヘアにゴールドのトップス、黒のミニスカート、黒のニーハイブーツといったスタイルで、男性ダンサーや女性ダンサーを従え歌い踊る姿はアーティストといった感じ。例えるならば、安室奈美恵、いや、レディー・ガガ、テイラー・スウィフト!? バービー人形のような見事なスタイルが存分に生かされた、凰稀らしい変貌(へんぼう)かもしれない。インタビューで、他の宝塚OGの皆さんのコンサートとはちょっと違う感じになると話していたが、冒頭から「なるほど」と思った。さらに多少誇張して言うならば、男性ダンサーはEXILE風、女性ダンサーはE-girls風。「今どき」感が感じられた。

 凰稀が登場すると客席はスタンディングで大盛り上がり。凰稀が客席に近づくと「キャー!!!!!」と悲鳴にも似た歓声があがる。歌が終わると「皆さんお久しぶりです! お元気でしたか~!?」と客席への第一声。「キャー!!!!!」と再びの大歓声だ。「宝塚じゃないので、静かに見ないように(笑)。盛り上がっていきましょう!」と呼びかけた。キャスト紹介では、スクリーンの映像とキャストの動きが連動して飽きさせない面白い演出だった。

(2)白華と大好きだったミーマイのナンバーを

2015年5月25日更新
写真:「The Beginning」公演から「The Beginning」公演から

 場面が変わり、曲は「THIS MASQUERADE」から始まる。凰稀はパンツスタイルに変わり、白華とデュエットダンスを踊る。色気と妖しさがMIXして、宝塚のショーにもありそうな場面だ。曲がタンゴになると、平澤と組んで踊るのだが、男女というよりは、男対男で戦うような感じだ。ジャズナンバー「Fever」では気だるい雰囲気の中、椅子やハットを使ったダンスがかっこいい。

 凰稀と白華のトーク、白華のソロ「手紙 ~拝啓十五の君へ~」をはさみ、上下赤のタータンチェックのパンツスーツに身を包んだ凰稀が登場。白華も同じく赤のタータンチェックに着替えて並ぶと、見たことがあるような雰囲気……。「大好きだったけれど、宝塚でやれなかったので」と「ME AND MY GIRL」のナンバーをふたりで歌い踊る。なんと言ってもタップが見どころのナンバー、「このためにタップも練習してきました」と笑う。宝塚星組時代に「リラの壁の囚人たち」でコンビを組んだふたりだが、当時の悲恋カップルとは対照的な可愛い幸せな雰囲気のカップルがほほえましかった。

(3)プリクラに初チャレンジ、客席は大爆笑

2015年5月25日更新
写真:「The Beginning」公演から「The Beginning」公演から

 そして「LOVE」「ラストダンスは私に」「オー・シャンゼリゼ」と3曲続く。2階の張り出しステップや1階客席に下りてきて、会場が一体となって盛り上がった。この後の映像は、場面転換や衣装替えのためもあって用いられたのだろうが、飽きることなく楽しめる内容だった。TETSUの指令でロリータ・ファッションやプリクラに初めてチャレンジする凰稀の姿がおさめられているのだが、おかしかったり、可愛かったり。右往左往する新鮮な反応に客席は大爆笑だった。

(4)ジャージー姿にビン底メガネでコントも

2015年5月25日更新
写真:「The Beginning」公演から「The Beginning」公演から

 続いてコントコーナー。人気劇団座長(平澤)の付き人となった凰稀が、ドタバタを引き起こす物語。緑のジャージー上下、ビン底丸メガネ、マシュルームカット、ホイッスルを首から下げた姿。出て来ただけでインパクト十分、とぼけた可愛い付き人だ。座長の妻あけみ(白華)、借金を取り立てるヤクザ風の男( IYO-P )らも加わり、全員の全力コントに終始大爆笑および大喝采だった。SHOW場面ではコールアンドレスポンスも交えて客席を巻き込んだ。

(5)宝塚とは違ったハードなダンスナンバー

2015年5月25日更新
写真:「The Beginning」公演から「The Beginning」公演から

 ラストへ向けて、ポップス、ジャズ、フラメンコ、マイケル・ジャクソンなど、さまざまな種類のダンスナンバーが続く。特に印象的だったのは、マイケル・ジャクソンの「Dangerous」と「Smooth Criminal」を中心としたナンバー。白ハット+赤のブラウス+黒スーツ姿で、マイケルダンスも取り入れた、ハードなダンスナンバーだ。宝塚とは違ったタイプのダンスを踊るのは苦労もあっただろうと想像する。ボルテージは最高潮だ。

 ラストに「手紙を書いて来ました」とファンへの感謝の思いを語り、自らを支えてくれたという歌、「Smile Again」を歌った。真っ白な衣装で、温かい思いのこもった歌を届けた。

 いろいろな場面でいろいろな凰稀が見られ、満足度の高いコンサートだった。クールで美しく、妖しく明るい、さらにゆるさも加わり、新たな魅力を披露。宝塚の凰稀と、新たな凰稀が絶妙に融合した、贅沢(ぜいたく)なコンサートだった。


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    neko Chan 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()