写真:(左から)緒月遠麻、湖月わたる、水夏希=撮影・伊藤華織


 湖月と水は、シリーズ第1弾のバレエ、第2弾のタンゴと共に経験を重ねてきた。緒月は同シリーズ初出演となる。取材に訪れたのは、スペイン・マドリードへ1カ月間の稽古に旅立つ直前。稽古場では、水がふたりにフラメンコの振りを教えていた。今回の構成・演出・振り付けを担当するホセ・バリオスが福岡でレッスンをすると聞き、水は忙しいスケジュールのなか、福岡まで訪れたそうだ。そのときに学んだふりを伝えていたらしい。

 

 水と緒月はフラメンコレストランを訪れて、その世界を体感した。湖月は昨年から基礎を学び、体に入れている最中だという。フラメンコの世界を知れば知るほどハマり、面白いと口をそろえる湖月と水に対して、緒月は不安だと恐縮する。実は、出演のオファーを受けたとき、食欲が止まるくらい驚いたそうだ。宝塚退団後1年間はストレートプレーに出演し続けてきたが、歌や踊りに意欲が向いたタイミングで挑戦できることを喜んだ。

 

 これまでの公演について聞くと、湖月と水は「本当に幸せな企画」と口をそろえる。湖月は「本物の方たちとやらせて頂けるなんて、ぜいたくな経験」、水は「(タンゴ公演を)あんなに緊張した公演はなかった」と振り返る。タンゴの稽古は、涙と汗と血がにじむ壮絶な経験だったが、「苦しかったけれど楽しかったね」と語りあった。

 

 今回は、フラメンコの本場で稽古をするが、湖月は「マドリードにいることだけで違うんじゃないか」、水は「大きな壁にぶつかる成果をぜひ見届けてほしい」、緒月は「こんな期間でも、人間がここまで成長できるんだというところを見てほしい」と今の思いを語った。

(1)お互いに習ってきたことを出し合って集結

2016年6月10日更新
写真:湖月わたる=撮影・伊藤華織湖月わたる=撮影・伊藤華織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――先程、水さん先導で踊られていたのはこの公演のものではないんですか?

水:公演のふりではないんですが、振り付けのホセさんのレッスンに行ったときにやって頂いたふりなんです。

――それを自主的に皆さんで共有されていたんですね。

全員:そうなんです!

湖月:みんなで助け合って(笑)。お互いに習ってきたことを出し合って集結しています。

――ホセさんのエッセンス的なものを伝えていらっしゃるんですか?

水:そういうわけではないんですが。ホセさんはすごく優しくてていねいな方で、カウントも日本語で言ってくださって。非常に覚えやすかったですね。

――福岡まで行かれたんですよね?

水:行きました。もう、必死です。

全員:(笑)。

――すごいですよね。福岡までレッスンに行くって当たり前の感覚なのかなと思って。

湖月:当たり前じゃないと思います!

水:ホセさんがたまたま日本にいらっしゃっているとお聞きして、「なぬ!」と思って行きました。

――水さんと緒月さんがフラメンコレストランに行かれたとブログで拝見しました。

水:エル・フラメンコ! すごかったね。

緒月:すごかった……。また不安になりました。

全員:(笑)。

湖月:そうだよね。

緒月:純粋に楽しめないんです。

水:私もそういう時期があって、見れば見るほど不安になってきて……でも、そこを超えたら私は楽しくなってきたかな。

緒月:なるほど。

水:フラメンコのカウントは12なんですが、「llamada(ジャマーダ)」という合図が入ったら10で終わるというルールがあって、これはお約束で、誰も何も言わなくても10で終わる。それがわかってくると、「お! 終わった!」と面白くなってくる(笑)。(水さんが手を鳴らして実演してくれました)

湖月:知れば知るほど面白くなるよね。どんどんハマっていく。

水:そのシステムがわからないと、何で? 何で?となってしまいますよね。

湖月:解明できないとね。

緒月:全然わからなくて、ただずっと見てました。

全員:(笑)。

緒月:楽しみ方が水さんと違った感じがします(笑)。

――湖月さんはフラメンコはいかがですか?

湖月:私は、宝塚で「激情」という作品に出演したとき、闘牛士のエスカミリオ役だったので、フラメンコは踊らなかったのですが、みんなで大阪のフラメンコレストランに行ったりしたんです。

水:そうなんですか!

湖月:カルメン役の花總まりちゃんの踊りを、蘭このみ先生が振り付けにいらしていて、すごいなと思ったんです。民族的なものを習得されて、踊りだした瞬間に世界が変わるというか。昨年からレッスンをはじめて、今年の年明けから、パブロ・セルバンテスさん、蘭先生にいろいろ基礎的なことを教えて頂いて、今、自分で体に染み込ませているところです。

――そのあたためた素材がいよいよこれから実践に入るということですね。

湖月:そうですね。それをみんなで持ち寄って、助け合って。

――緒月さんはいかがですか? 今日はずっと恐縮していらっしゃるようですが……。

湖月:このシリーズにも初参加だからね。

水:そうそう。

湖月:私たちと原田薫さんはこのシリーズを一緒にやってきているのですが、ニューフェースだもんね。

――しかも、ニューフェースがおひとりですもんね。

緒月:はい。

湖月:男性にひとり大貫勇輔さんもいらっしゃいます。大丈夫。すぐなじめるよ!

緒月:……はい。

全員:(笑)。

水:宝塚を退団してからのダンス公演が初めてだというから、それもまた大変な気持ちになってしまうのかもね。

緒月:ずっとお芝居に出させて頂いていたので。

――おふたりと一緒にいらっしゃっていかがですか?

緒月:もう、頼もしいのひと言です。メンバーを聞かせて頂いた時点で、「ああ、本当にありがとうございます……」と思いました。

湖月・水:(笑)。

(2)タンゴが本格的だった……今回は上回るかも

2016年6月10日更新
写真:水夏希=撮影・伊藤華織水夏希=撮影・伊藤華織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――「DANCE LEGEND」シリーズに出演されてきた湖月さんと水さんは、第1弾、第2弾と海外の方々とコラボレーションをされて、その経験はどんなものですか?

湖月:本当に幸せな企画ですね。

水:本当ですよね!

湖月:第1弾はアメリカに行って稽古させて頂いて、第2弾はタンゴダンサーの方々が日本に来てくださいました。特に、これだけ本格的にタンゴだけに集中してやらせて頂くことなんてないよね。

水:そうですね。

湖月:ブロードウェーミュージカルなどで国際的に活躍なさっているグスタヴォ・ザジャックさんの演出、振り付けで、本物のアルゼンチンタンゴダンサーの方と組んで踊らせて頂けて、本当にぜいたくな経験でした。その分、涙と汗と、血も流し……(笑)。

水:タンゴの傷がやっと治った頃ですよ(笑)。

――タンゴの稽古を拝見させて頂いたとき、アスリートの方々が特訓しているような感じでした。

湖月:筋トレからはじまったね!

水:そうですね。

湖月:リフトもありましたし。あの時のタンゴがあまりに本格的で、すさまじい日々でしたから、今回はどうなることだろうと。あれを上回るかもしれないね。

水:上回ると思いますね。

湖月:楽しみだね。

――緒月さんは今までの舞台はご覧になっていますか?

緒月:昨日タンゴのDVDを借りたんですが、まだ拝見していなくて。

湖月・水:うわぁ! 見るんだ!

緒月:帰って拝見します!

――前回のタンゴを拝見したとき、はやくスタンディング・オベーションを送りたいとソワソワしました。

湖月・水:うれしいです!

湖月:楽しかったね。

水:そうですね。苦しかったですけれどね。

湖月:うん。苦しかったけれど、楽しかった!

水:あんなに緊張した公演はなかったですね。毎公演、開演前に「ああ……」と神に祈るみたいな感じでした。

――今回はスペインのマドリードで稽古をされると伺いました。まもなく出発とか。準備は万端整いましたか?

水:ちょうど何を持っていこうかと話していたところです。

湖月:約1カ月行くので、どうしようってね。

水:アメリカとは勝手が違う感じがしていて。

――スペイン語はいかがですか?

水:一応フラメンコに出てくる言葉は何となく覚えました。

湖月:用語が結構難しいのよね。

水:あとは、「アスタマニャーダ(また明日)」だけです(笑)。

全員:(笑)。

――稽古づけの日々だとは思いますが、それ以外にやりたいことなどお話しされましたか?

水:闘牛ですよね。(湖月さんに向かって)

湖月:私は闘牛を見にいきたくて、ふたりに「やっていたらついてきてくれる?」とお願いしているんです(笑)。

緒月:行きますよ! もちろん!

湖月:ひとりで行く勇気がないので(笑)。

――向こうの環境につかることで、得たいものはありますか?

湖月:マドリードの空気を感じながら、フラメンコのスピリットを体に染み込ませたいと思っています。

水:どんなリハーサルになるかも想像がつかないですしね。

湖月:招請メンバーもこのためにオーディションを受けて選ばれた方たちなので、おそらく彼ら同士もはじめてなんだと思います。皆さん有名な舞踊団から集まっているんですよ。

(制作側から100人超えのなかからオーディションで選ばれたと聞いて)

水:うわぁ!

緒月:え――!

湖月:すごいね。

――選抜メンバーなんですね。

湖月:彼らもはりきって技とか出してくるんじゃない?

水:ヤバいですね! タンゴの稽古のときも、いきなり踊りだす感じで大変でしたよね?

湖月:そう。私たち初級なのに、いきなりプロコースみたいな振り付けからスタートして、タジタジだったよね。私たち操られた人形のようだったよね。

水:そうそう!

緒月:(笑)。

水:今回も、いきなりやってくるんじゃない!?(足をバンバンとならす水さん)

湖月:そしたら、私たちは手をたたくしかないね(笑)。(手拍子をはじめる湖月さん)

――緒月さんは男性と踊られるのは初めてですか?

緒月:そうですね。退団してからダンスをするのが初めてですから。

(3)メンバーを知ったときに、食欲が止まりました

2016年6月10日更新
写真:緒月遠麻=撮影・伊藤華織緒月遠麻=撮影・伊藤華織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――皆さんの宝塚退団後の活躍を拝見していて、いつも大変な方へ向かっているように感じるのですが、どんな精神力がその原動力になるのでしょうか?

湖月:宝塚で、ひとつのものをひたすらというより、いろんなことに携わらせて頂いたので、「できない」ではなくて、「やってみたい」と思うんだと思います。レッスンをして自分を追い込んでいくのも好きなんですよね。

――ちゅうちょはしないんですね?

湖月:……ないかもしれませんね。

水:バンジージャンプをやれと言われたら、ちょっとちゅうちょするかな?

全員:(笑)。

湖月:そういうのは私も無理?! 絶対無理……。

緒月:私は飛べます! フラメンコよりも大丈夫。

全員:(爆笑)。

緒月:全然、飛べます(笑)。

湖月:え?! やだ! フラメンコがいい!

水:(笑)。

緒月:バンジーの方が不安がないです。飛べばいいんですから。すぐに行けます!

湖月:勇気さえあれば行けるのか。よし!(笑)。

――おふたりはちゅうちょしないとおっしゃいましたが、緒月さんは今回の出演をちゅうちょされましたか?

緒月:ありましたよ!!! 最初に話を伺ったときに、「え?!」と言いました。怖すぎて、考えてしまいました。

湖月:私たちが怖くて?

水:(笑)。

緒月:私、メンバーを知ったときに、食欲が止まりました。たくさん食べていたのに、メールで知らせが届いたときに、止まってしまうぐらい衝撃的でした。

水:づっくん(緒月)何してるかなと思ってブログを見たら、「私をメンバーに選んでくださった……。

緒月:梅田芸術劇場さんの……(笑)。

水:……勇気に応えたいと思います」って(笑)。

湖月:勇気?!

緒月:勇気ですよ!

湖月:退団すると、学年も組も越えて、一緒にひとつの作品を作ることができるじゃない。在団中ではかなわなかった共演なので、今回もとっても楽しみ。

水:在団中の接点はありますか?

湖月:私が専科のときに雪組さんに出演させて頂いたことがあるの。

――「猛き黄金の国」「パッサージュ」と、「風と共に去りぬ」でご一緒されていますね。

湖月:私たち、ちょっと似ていて、兄弟って言われていたんですよ。

緒月:そうでしたよね。

湖月:顔の骨格が似ていたみたいで。

緒月:皆さんによく言って頂いて、とてもうれしかったです。

湖月:名前も似ているしね。今回は1幕で姉妹の役なんです。

――それは生かされますね。水さんはどんな役ですか?

水:私は、事件が起こる場所のオーナーのような感じです。

湖月:1部はストーリー仕立てで、スペインのダンサーの皆さんと、悲劇的な恋をドラマチックな展開で描きます。2部は斬新な曲と構成で、私たちとスペインのダンサーがコラボして、ダイナミックで刺激的なショーをお届けします! ジャズ風に踊るクールな場面もあるんですよ。

水:今、その部分を振り付けしています。

湖月:SHUNさんの振り付けで、原田さんも加え、女性4人で踊ります。

――どんな感じのナンバーですか?

水:どんな風に見えるでしょうね。

湖月:音楽もフラメンコを基調にしたジャズなので、他のシーンとはちょっと雰囲気の違うナンバーになるんじゃないかと思います。ジャズの世界で見せるフラメンコで、BAD GIRLS本領発揮!のナンバーになると思いますので、ぜひこちらも楽しみにして頂きたいです。

(4)上級生に歩み寄って、下級生とつないでくれた

2016年6月10日更新
写真:湖月わたる=撮影・伊藤華織湖月わたる=撮影・伊藤華織

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――緒月さんは水さんの役を新人公演でされていましたよね。
 
湖月:そういう関係なんだ!
 
水:そうなんです。
 
緒月:「スサノオ」のアオセトナなど、やらせて頂きましたね。
 
――学年は離れていらっしゃいますが、いろいろとご一緒されていますよね。
 
緒月:本公演でも、ちかさん(水)と絡ませて頂く役が多かったです。
 
水:絡んでいたね。退団公演もそうだよね。
 
緒月:そういうご縁があるなと思っています。
 
水:宝塚時代のことをよく知っていて、「あのとき、ああでしたよね」とか、よく覚えているなと!
 
緒月:(笑)。
 
湖月:新公(新人公演)のこととか初めて知った!
 
水:私のトップ時代を支えてくれていた中堅どころでしたね。
 
――お互いをどんな風に思っていらっしゃいますか?
 
緒月:やっぱりすごかったですよ!
 
水:軍隊みたいだったよね(笑)。
 
緒月:ご自分が出ているのに、周りをちゃんと見ているんです。同じ場面に出ていたのに、いつ見ていたの!?って。疲れていても、ぽつんとダメ出しを言われたりするんですよ。ご自分の出番直前にいろいろ言ってくださるんです。
 
水:「わー」と言って、舞台に行っちゃうんだよね(笑)。
 
緒月:気づいたらすぐに言ってくださるので、私はいつも気を張っていました。出番直前でも、ちかさんが何か言ってくれる気がすると思って。ぼーっとしていると聞き逃してしまうから、新人公演の頃は、ちかさんの後ろによく立たせて頂いていました。いつも、何かにぶら下がるんですよ。「Sカン(S字フック)のここに指を掛けるだけで大分楽になるから」って真剣におっしゃるんです。意味わかりますか?
 
水:自分ひとりで立っているよりも、ちょっとぶら下がるだけで楽なんですよ。
 
緒月:(指を1本かける程度に)こんなにちっちゃなSカンなんですよ!
 
湖月:考えたことなかった……。
 
水:ない!? 本当ですか?
 
緒月:私、やめられてからも必ず言ってました。「これ、ちかさんが言ってたから。楽だよ」って。
 
湖月:やってみる! 今度フラメンコでつらくなったら!
 
水:やってみて! やってみて!
 
全員:(笑)。
 
緒月:本当にちっちゃなSカンですよ!
 
湖月:Sカンね! 持っていって、ホテルのどこかでぶら下がろうかな。
 
緒月:(笑)。実際に楽だなと思いましたよ!
 
水:そうでしょ!?
 
湖月:本当!? 楽だった?
 
緒月:ひとりで立っているよりは楽ですよね。
 
湖月:いい情報をありがとう!
 
緒月:名言ばかりをおっしゃるんですよ。
 
――みんなでSカンにぶら下がっていたりして?
 
湖月:今回はつらくなったらSカンにぶら下がろうか。
 
緒月:何かに少しもたれかかるだけで楽になるんですよね。水さん面白いなと思っていました。
 
――水さんは緒月さんの印象はいかがですか?
 
水:彼女も面白いですよ! ひょうひょうとしていて。「私はバンジージャンプの方がいい」と言うようなノリですね。
 
緒月:全然、飛びますよ!
 
水:下級生で学年はすごく違うんですが、上級生に歩み寄ってくれて、下級生とつないでくれていた感じはありましたね。
 
湖月:やる~♪
 
水:初舞台なんだった?
 
緒月:「あさきゆめみし」です!
 
水:そうだ! 花組時代で、それも一緒だったんだ!

 

(5)本当に頼りにしていて、一緒にできてうれしい

2016年6月10日更新
写真:水夏希=撮影・伊藤華織
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
――湖月さん、水さんは、退団されてからご一緒されることが多いですよね? 同じ頃にトップスターであったことや、ダンスの名手でいらっしゃるという共通点が印象的です。
 
湖月:劇団にいるときも、劇団レッスンであっていたよね。
 
水:私もその印象が強いです!
 
湖月:クラシックバレエ歴が長いの?
 
水:そうでもないです。
 
湖月:自分のダンスとはまた違って、すごくしなやかに踊るんですね。レッスンにたくさん出ている印象があったから、とても勉強しているんだろうなと思っていました。このシリーズで一緒になって間近で見ていると、すごくストイックだなと。
 
水:みんなそうですよ!
 
湖月:やると決めたら突き詰めていく、とことんやるタイプだと思います。調べたり、事前に準備したり。
 
――福岡にレッスンに行ってくるようなことですね。
 
湖月:誰よりもフラメンコの用語を知っていると思いますし、そういう研究心もすごくありますよね。本当に頼もしくて、また一緒にできてうれしいです。
 
水:やっぱり退団してからご一緒することが多いですよね。このシリーズ以外にも「CHICAGO」やOG公演もありますし。私が印象的だったのは、わたさん(湖月)がトップになられたときの「王家に捧ぐ歌」で、将軍になる若き獅子がぴったりだなと思って! なんてすてきなトップお披露目公演なんだろうと思ったんです。こういうトップさんになれたらすてきだなと思ったことを、すごく覚えています。
 
――なれたらすてきだなと思われて、実際にご自身の個性はどうでしたか?
 
水:違いましたね。
 
全員:(笑)。
 
水:そのときはそう思ったんですよ! 全然違ったんですが(笑)。
 
湖月:でも、違うからお互いに惹(ひ)かれ合うのかもしれませんね。無いものを探っているのかもしれない。
 
水:退団してからダンスを続けている方がそんなにいらっしゃらないですよね。ヤンさん(安寿ミラ)はやっていらっしゃいますが。
 
湖月:ダンス公演をする方はあまりいないかもね。
 
水:疲れたな、若い子たち頑張っているなと……と思うと、「でも、わたさんもガンガンやってるもん! 私も頑張る!」と励みにさせて頂いています(笑)。
 
湖月:わかる、わかる(笑)。私も怠けそうになると、「今頃、水ちゃんは腹筋やっているのかな。私もやってから寝なきゃいけないな」って思いながら、そのまま寝ちゃったり(笑)。
 
全員:(爆笑)。
 
湖月:腹筋している水ちゃんの姿を思い浮かべるの(笑)。
 
――先程、緒月さんがこのメンバーを聞いて食欲が止まるほどだったとおっしゃいましたが、それでも出演しようと思われたのはどんなところですか?
 
緒月:やっぱりこんな経験させて頂けることはないと思いました。ずっとお芝居ばかりやってきましたし、チャレンジだと思って決めました。皆さんが素晴らしいですから、素直にご一緒してみたいと思いました。
 
――一年経って、踊りたくなりましたか?
 
緒月:確かに芝居ばかりやっていると、歌をやってみたい、踊りをやってみたいという思いはありました。そのタイミングでこのお話を頂いたので挑戦だと思って参加させて頂きました。
 
 

(6)男役をやってきたからこそ出せるパッションを

2016年6月10日更新
写真:緒月遠麻=撮影・伊藤華織緒月遠麻=撮影・伊藤華織
 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

――湖月さんと水さんは、退団後さまざまな作品にバランス良く出演されているイメージがありますが、例えば芝居だけをやるとか、ダンスを極めるというのではなく、宝塚で培ったものをベースにいろいろやっていきたいと思われていらっしゃいますか?
 
水:去年の暮れにダンス公演に出演させて頂いて、ダンサーの方たちと一緒に過ごしていたのですが、自分はダンサーではないし、歌手でもなく、「芝居一本でやってきた役者です」とも言えない。けれど、どこにも属さないことが不安定でありながらも、そこが元宝塚であることの良さだとプラスに受け止めて、どれもバランス良くできるようになっていることに、自分の立ち位置を見いだしていきたいと思いました。そういう思いがこの一年ほどで、自分のなかでまとまったんです。踊りはずっと続けるわけにもいかないですしね。
 
湖月:自分がやりたいからってできる世界ではないですよね。私をその作品に選んでくださったことを信じて、頂いた役、歌、ダンスに毎回課題を与えて、クリアできるようレッスンと稽古を重ね続けた結果、様々な作品に出会うことができたのかなと思います。在団中から、「たとえ希望とは違う結果になったとしても、努力は自分を裏切らない」と信じて、いつどんな役を与えられてもこたえられるよう、レッスンをしていますが、進化し続ける自分でありたいと思っています。ダンサーさんのなかに入ると本当にすごいよね!
 
水:本当に!
 
湖月:8小節で「技」をやってと言われてもできないよね!
 
水:そうなんです!
 
湖月:そういう意味での「技」は持っていないかもしれないけど、今まで得てきたことを生かして、全力でぶつかっていこうと思います。
 
緒月:私は、その世界に飛び込んで行くということですね。
 
――最後に、楽しみにされているお客様へメッセージを頂けますでしょうか。
 
湖月:スペインの著名な舞踏団の中からさらにえりすぐられた新バッドガールズ、バッドボーイズと、大貫さん、バッドガールズの原田さんと私たちが、フラメンコをベースに、激しく、ドラマチックに演じ、踊ります! もちろんバッドガールズ、バッドボーイズならではの、格好よく、クールで、情熱的なダンスシーンもあります。男役をやってきたからこそ出せるパッションや目ジカラも生かせるよね!
 
全員:(笑)。
 
湖月:長身で鍛え上げられたすてきなスペインダンサーと、私たちのコラボレーションは、思いもよらない化学反応を起こすと信じています。ホセさん新演出・振り付けの斬新なフラメンコの世界を見て頂けたらいいなと思います。
 
水:今からこの大きな壁に!!
 
湖月:自らぶつかりにね(笑)。
 
緒月:本当ですね!
 
水:その成果をぜひ見届けてほしいです。
 
湖月:1カ月ってあっという間だけれど、レッスンと稽古で濃密な時を過ごせそう。
 
水:1カ月海外にいくことってなかなかないですよね。
 
湖月:本当にフラメンコだけに没頭できるので。
 
水:家の片付けとかしなくていいんですよ!
 
緒月:ありがたいです。
 
湖月:フラメンコに染まった私たちを見て頂きたいですね。
 
緒月:こんな期間で人間がここまで成長できるんだと……本番の舞台を見てほしいです。
 
湖月:絶対に追いていかないから大丈夫だよ。
 
緒月:私もしっかり付いて行きます。
 
湖月:みんなで力をあわせて頑張りましょう!
 
水・緒月:はい!
 
〈インタビューを終えて〉
 前回のタンゴ公演の稽古場が強烈で忘れられない。ケガをする現場にも遭遇し、身を削って戦う姿は壮絶だった。宝塚で一度極めた方たちが、さらに上を目指し、悪戦苦闘する姿に、ただただ感嘆した。尽きぬその力はどこから湧いてくるのだろうか。あの稽古を経て見た舞台は、本当に素晴らしい公演だった。あの記憶が鮮明に残るからこそ、フラメンコへの期待もいや応なしに高まっている。1カ月の滞在で身にまとうであろうマドリードの風を、初夏の日本で大いに吹き荒らしてほしい。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 

 

 

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