雪組の凰稀かなめ(左)と緒月遠麻=撮影・岸隆子
2009年最初の宝塚バウホール公演は、雪組スター音月桂主演のラブ・ストーリー『忘れ雪』。『マリポーサの花』でも音月の恋人役を務めた入団2年目の舞羽美海をヒロインに迎え、切ない純愛を描く。今年で入団10年目を迎え、近年ますます存在感を増している凰稀かなめと緒月遠麻もこの舞台に出演中だ。2人は舞台で一緒に組むことも多く、08年は『凍てついた明日』や、ショー『ソロモンの指環』で強い印象を残した。プライベートでも仲が良いという2人の名コンビぶりが伺える楽しいエピソードと、『忘れ雪』でのそれぞれの役への取り組みについて聞いた。
笑いのツボが同じ
- ── お2人は同期ですが、舞台上でもお2人で組む場面が多いですね。2004年のショー『タカラヅカ・ドリーム・キングダム』で登場した「夜の女王」役が、お2人の強い存在感を印象づけたのではないかと思いますが。
- 凰稀かなめ 新人公演などでも2人で組む場面はわりと多かったですね。
- 緒月遠麻 夜の女王のような大きな場面を2人でいただくことは、研5くらいから増えてきたかと思います。
- ── 舞台以外でもお2人でのトークのようなお仕事も増えていますね。わりと静かなお2人というイメージですけど。
- 緒月 騒ぐときは騒ぐんですけど(笑)、基本は静かかもしれません。同期しかわからない同期ネタみたいな場になると騒ぎますね。
- 凰稀 すごくうるさいときもあるんですけど、テンションは低めですね(笑)。
- 緒月 何かを見たり聞いたりするときに感じる感覚がお互い似ているんです。笑いのツボが2人とも同じなので、一緒にいるとラクだし、楽しいんですよね。
- ── プライベートでも仲が良いそうですね。オフでも一緒に出かけたりすることもあるんですか。
- 凰稀 昔はよく遊びましたけど、学年が上がってからあまり一緒に出かけなくなりましたね。
- 緒月 ディズニーランドに2人で行って、中に入ったとたん疲れてお茶を飲みに行ってしまったという話はいろいろなところでして、私たちを象徴する有名なエピソードなんですけど(笑)、実は1回しか行ったことがないんですよ。
- 凰稀 いやいや、2回行ってるんですよ。ディズニーランドとディズニーシーと両方。
- 緒月 え? 覚えてない。
- 凰稀 結局、何も乗り物で遊んでいないから…。
- 緒月 ディズニーランド自体は楽しいと思うんですけど、人が多すぎて疲れるんですよね。
2人とも人が多いのが苦手なんでしょうかね。映画はよく一緒に観たりします。今度また観に行こうという話はしてるんですよ。 - 凰稀 最近、一緒に観た映画といえば、「こっくりさん」(笑)。
- 緒月 ホラーが気になりますね。怖がっている自分がおもしろいんです(笑)。怖いのに見たいんです。でもほんとうは、全然見ることができないんですよ、怖くて。そういうタイプの映画をわざわざ見に行くんです。
- 凰稀 ひとりだと絶対に見ることができないので、誘うんです。
- 緒月 そう。いろいろ見たいなと思うけど、結局ホラーになるんですよね(笑)。
- 凰稀 でもぜんぜん違うタイプの映画もあった。「舞妓Haaaan!!!」を一緒に見に行って大爆笑したね(笑)。
- 緒月 ときどき凰稀さんのお宅でビデオパーティをしたりすることもあります。同期や未来優希さんなども呼んで。最近ではドキュメンタリー「余命1ヶ月の花嫁」と、ホラー系というか鮫の出てくる怖い映画「ディープ・ブルー」。お互いにお薦めのものを持ち寄って見るんです。
- 凰稀 最初に怖いのを見て、悲しいのを見て泣いて、解散、という感じです(笑)。
プレイボーイとマイ・オフィス
- ── 雪組内で分かれて公演があるときでも、お2人は一緒の舞台に出る機会が多いですね。仕事のこともよくお話されていると思いますが。
- 凰稀 昔から舞台の話はよくします。でも信頼し合っていますから、お互いに言葉にしなくても分かり合えるような部分があります。
- 緒月 下級生のときから、わりと一緒の公演に出る機会は多かったですね。一番大変だったのは、『堕天使の涙』の新人公演のときでした。「青い薔薇の園」でのダンス場面は2人でじっくり話し合って作っていった、今でも思い出深い場面です。
- 凰稀 あのときは、本当に大変でしたね。本役の朝海ひかるさんと水夏希さんがダンサーだったから、とにかく何度も何度も練習するのみでした。
- 緒月 「話し合っては踊る」を繰り返したという感じでした。本番での出来はどうであれ、とにかくやり終えた満足はとてもありましたね。
- ── 今回の「忘れ雪」もお2人はご一緒されますが、お2人の役への取り組みはいかがですか?
- 凰稀 今回は主演の音月桂さん演じる桜木一希の親友、外科の研修医、鳴海昌明役です。大物政治家の息子でお坊ちゃま。何人もの女性と同時につき合ったり遊んだりするプレイボーイで、自分の恋愛対象としては絶対選ばないタイプなので(笑)、役作りはすべて想像ですね。
でも理解できる部分もたくさんあります。鳴海は本当の恋をしたことがないんじゃないかな、と思うんです。父親とはうまくいっていなくて、人と人とのすれ違いが悲しいんです。外見は素敵でたくさんの女の人に囲まれていても淋しさと孤独は消せない。でもそういう孤独な部分を人前では絶対に出さない。本当は人に対して気を遣うし、優しい人だと思うんです。もしかしたら一番ピュアなのかもしれない。そういうところを大切に演じていければと思っています。 - 緒月 大物政治家である、鳴海のお父さん(飛鳥裕)の秘書、笹川宗光役です。音月さん演じる桜木に対する敵役というか、ちくちく桜木に意地悪をする、『シルバー・ローズ・クロニクル』のヴァン・ヘルシング役とか、『マリポーサの花』のフェルッティ役のようなスーツ姿の悪者役ですね。
前回のマイアミのマフィア、フェルッティのように、今回もまた“マイ・オフィス”があるんです(笑)。 - 凰稀 マイ・オフィス! 多いね。ほんとに(笑)。
- 緒月 また舞台にデスクと椅子があって(笑)。でも、今度はマフィアではなく政治家の秘書というインテリですから、スチール撮影では眼鏡をかけてみました。いかにも政治家の秘書といった、なにを企んでいるんだろう、という雰囲気を出したいと考えています。
- 凰稀 本当に悪い顔をしています、父と一緒になって(笑)。父と笹川は考え方が一緒なんです。なんでわかってくれないの、いや、わかる部分もある、だけど…。複雑なんです。
鳴海の方は、ロングヘアー、ピアス、ネックレスなど、遊び人風の雰囲気が出るようにビジュアルを作っていこうと考えてはいるのですが、父が政治家、母が華道の家元ということですから、プレイボーイとはいっても品が漂っていなければ。ここがポイントですね。まだまだ考え中です。 - 緒月 今回、2人一緒の芝居の場面は1場面ぐらいなんですけど、もともとの考え方が全然違うから、ずっとすれ違いばかりなんですよ。
- 凰稀 人との関係をこういうふうにしたくない、と稽古場でも話をしているんです。意見をぶつけ合いながらだったら、喧嘩をしてもコミュニケーションは取れていると思うんですが、お互いの意見がお互いを素通りしているという状態で、それは切ないですね。
- ── 歌やダンス、装置など全体的な作品のみどころは、どのようなところですか?
- 緒月 マーチングバンドが出てきて大太鼓やシンバルの演奏があったり、舞台装置も凝っていてかわいいセットがあったり、舞台上でもみどころは盛りだくさんですし、歌もたくさんあり曲もきれいです。
- 凰稀 ダンスで表現する場面もあります。外部の先生の振り付けでヒップホップ・ダンスなど新しいこともたくさんあって、難しいですけどおもしろいですね。
- 緒月 キーポイントはやっぱり子犬ですね。これはお話してしまうとおもしろくないので、見ていただいてのお楽しみです。
- 凰稀 とにかくピュア、です。私はとても泣きました。何かを犠牲にしてまで、前に進んでいくこと、大切な人がいなくなってしまっても、前向きに進んでいこうとする部分。成長していく心の変化を見てください。
- ── 新年早々の公演になりますが、お正月のお休みは?
- 緒月 お正月は実家でゆっくりしました。年明けから舞台稽古があって、8日から公演です。
- 凰稀 私も同じです。2008年はとにかく忙しくて、フルスピードで毎日がまわっている感じでしたが、2009年はもっと忙しいと思います。また、入団10年目になりますが、どういう男役になりたいということは決めずに、とにかく目の前の課題をどんどんこなしていくしかないと思います。
- 緒月 昔は与えられたものを一生懸命がんばるという考えでしたけど、09年は舞台ごとにひとつひとつ目標を決めて進んでいけたらと思います。目標をもつことは大切だと思いますから。
- 凰稀 実は今回も大変な課題があって、鳴海君として今大変な状態なんです。何が大変なのかは舞台を観ていただければわかっていただけると思いますので、今は秘密です(笑)。
- 緒月 本当にあれは大変だと思いますね。まあ、皆さん、楽しみにしていてください(笑)。
◆バウ・ピュア・ストーリー『忘れ雪』 原作/新堂冬樹「忘れ雪」(角川書店) 脚本・演出/児玉明子
《宝塚バウホール公演》:2009年1月8日(木)~1月18日(日)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)/《日本青年館大ホール公演》:2009年1月23日(金)~1月29日(木)(詳しくは宝塚歌劇団公演案内へ)
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