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初の新人公演主役を前に「同期とのキスシーンは照れます」とはにかむ七海ひろき(撮影・上田博志)

涼しげな目元に笑顔が印象的だ。入団7年目、宙組の男役・七海ひろきが6日に行われるミュージカル「薔薇に降る雨」の新人公演で初の主役を務める。バレエを習い始めたのは中学に入ってから。音楽学校時代も周囲についていくのが必死だったというスロースターターの七海が、初のビッグチャンスで“答え”を出せるのか。大きなプレッシャーの中「お客さまに“この新人公演を見てよかった”と思ってもらえる公演にしたい」と舞台人としての原点にこだわりを見せた。

 タカラジェンヌにとって大きく飛躍できるチャンスでもある。しかし、七海は戸惑いを隠しきれない。下級生のころから注目される存在だったわけでも、これまで新公で大きな役を任されたこともない彼女にとって不安はぬぐい去れない。

 「うれしさよりも“どうしよう?”っていうのが正直なところでした。正塚(晴彦)先生の作品だからセリフが非常に多くて。舞台でそんなしゃべった事もないのに」。冗談めかして笑った笑顔も、慣れない取材からなのか、少しぎこちなかった。

 それでも「主演という大きなチャンスをいただいたわけですから重圧は感じますが、それ以上にジャスティンという役『身分違いの相手に恋する青年』という役を自分なりに表現できるよう、無理だとは思うけど楽しんでやってみたい」と精一杯、自分なりの目標を掲げた。

 コンビを組むヒロイン役の愛花ちさきとは同期の間柄。先の「Paradise prince」で一足先に新公初ヒロインを経験しているとあって、この上ない相談相手だ。「いろいろ迷惑をかけるので、よろしくお願いします」。香盤発表の日、冗談っぽくお辞儀したが内心は本気だった。しかし困ったことがひとつ。キスシーンがかなり多いのだ。「同期だから、余計に照れるんですよねぇ」と顔を赤らめ小首をかしげた。

 小さいころ、朗読会で先生に褒められたことがきっかけで演劇部に入った。中学に入って天海祐希のサヨナラ公演「ME AND MY GIRL」を見て大感激。「タカラヅカに入りたい」とそこからバレエを習い始めた。

 だが、そんなに世間は甘くない。体も硬くバレエ用語も分からなかった。茨城・水戸から東京の受験スクールまで往復5時間。高校は進学校だったため勉強との両立は厳しく、その電車の中で試験勉強したこともある。「夢をかなえたい」。すべてはいちずな強い思いがあったからだ。

 音楽学校に入ってからもレベルの高い同期生についていくのが必死だった。「絶対センターに立ちたい」という強烈な思いもなかったという。しかし「タカラヅカにしかない男役の芝居を極めたい」という思いは誰にも誰にも負けないつもりだ。

 背伸びせず、基本に忠実に。「当日は自分のことでいっぱいいっぱいだとは思うけど、お客さまに“この新人公演を見てよかった”と思ってもらえるような公演にしたい。そして終わったら、今までの自分と違う私に出会えることを楽しみにしたい」と全力投球を誓った。

 ◆「薔薇に降る雨」 舞台はフランス南部ニース。「スポーツカーを自分で作る」という夢を持つ青年ジャスティン(七海、本役・大和)と、休暇でニースを訪れていた伯爵家の令嬢イヴェット(愛花、本役・陽月華)は運命的な出会いを果たしそれから毎日のようにデートを重ねていた。
 しかし、ジャスティンのもとにある日突然、彼女から「もう会えない」という手紙が届く。貴族の令嬢と一青年との関係が許されるはずもなかった。両親が無理やり引き裂いたのだ。
 それから7年、調査会社を経営するジャスティンと、投資に失敗し、実家が没落したイヴェットが再会。彼女は大富豪グザヴィエ(澄輝さやと、本役・悠未ひろ)との結婚を受け入れざるを得ない状況に陥っていた。イヴェットの実家が失敗した投資に何かワケがあるとにらんだジャスティンは調査に乗り出した。さまざまな因縁が絡んでいたことが明らかになり、2人の関係は意外な方向に展開する…。

 ☆七海(ななみ)ひろき 1月16日生まれ、茨城県水戸市出身。県立水戸第2高を経て03年「花の宝塚風土記」で初舞台。身長173センチ。愛称「かい」。

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    neko Chan 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()