宙組へ移り、男役2番手に就いて2作目。凰稀かなめは、ミュージカル「クラシコ・イタリアーノ-最高の男の仕立て方-」(11月7日まで兵庫・宝塚大劇場)で、サルヴァトーレ(大空祐飛)撮影のためイタリアへ渡ってきた米映像作家を演じる。ここ数年、異動続きだが、新たな環境で学ぶことは多い。今作で言うセリフ「人と人との出会いって、おもしろいものだな」を実感する日々だ。本来は引っ込み思案という凰稀がまた1歩、次の世界へ踏み出していく。東京宝塚劇場は11月25日~12月25日。

 寡黙。クール。だが、笑うと少年のようでもある。

 「人に影響されることで勉強する、っていうこともありますよね」

 意志を持って、影響されている。

 今作で演じるのは、米映像作家のレニー。ナポリスーツを世に広めた男サルヴァトーレ(大空)を取材するため、イタリアにやってくる。性格、年齢、環境、出身地、すべて違う。そんな彼とぶつかり、次第に影響されていく。カジュアルファッションのレニーが、サルヴァトーレから「仕事をする相手に失礼だ」と叱られる場面もある。

 「一流大学を出たレニーはアメリカでは売れっ子だから、自分に厳しく言ってくれる人はいない。でも、どん底からはい上がり、仕事が好きだからこそ、人にも自分にも厳しい彼と接することで、レニーは忘れかけていたものに気付く。私も宝塚が好きで入った。そんな初心を思い出させてくれる感じなんでしょうね」

 出会いの大切さは、ここ数年、体感してきた。入団12年目。09年4月に雪組から星組へ準トップとして異動し、今年2月には、同じ立場で宙組へ移った。

 「あのですね、私、前に出るのも、自分から話すのも苦手で。自己主張も、基本的にしない。できない。だから、組替えは大変。舞台は1人で作るものでなくて、自分を分かってもらい、相手を理解しないと」

 それでも、組替えを「良かった」と言える。最初の転機は星組異動だった。

 「(星組は)すごくオープンな空気で、下級生は人懐っこく、上級生もどうぞって感じで。けいこで失敗しても、笑いで飛ばす。私は失敗することが怖かったので、挑戦していく姿にひかれた。人に、舞台に対して、オープンでいかなきゃって、初めて分かった。組替えは芸の肥やしですね」

 宙組には、常に男役であることを意識するトップ大空がいた。高いプロ意識から、学ぶことは多い。前作「美しき生涯」は大空に体当たりで臨んだ。

 「お芝居で私のことを分かってもらおうと。互いにしゃべることが苦手だったので、最初は会話もあまりなかったんですが(笑い)。でも(2人で)抜きげいこをしていくうちに、すごく話すようになりました。感性が近い気がするんです。もちろん、祐飛さんはずっと深みがあるので、私は盗み、盗み(笑い)」

 次の部屋の扉が開いても、簡単に1歩は踏み出せない。だが、一度歩みを進めれば、着実に前へ進む。

 「自分の中で納得いくまで、すっごく時間がかかるんです。下級生のころは、悩んで葛藤していました。ある意味、頑固で、誤解を招くことも多々あった。でも、それも含めて自分だから、今は焦らずマイペースで、と思っています」

 習得までに時間を要しても、あきらめない。そして「大魚」を得る。私生活のささいな場面でもそうだ。

 「あんまりないんですけど、はまると熱中する。最近では(美しき生涯の)東京公演中に、上級生の方がやっていらした、なめこのゲームにはまりました」

 携帯電話などのソフトで、なめこをカビなどから守りながら増殖させていく。多種のなめこが登場するゲームだそうだ。

 「やり方が分かり始めたら楽しくて。途中から、それ(先輩の携帯電話)を、自分のところに置いて独占してやり続けました(笑い)。いろいろ道具を集めて、なめこを育てていくんですよ。レアなめこも全部出して、満足して、ちょうど、千秋楽を迎えました」

 今は、将来の男役像の答えを探している。

 「昔から決まらない。でも、それもいいのかなって。やっぱり、型にはまりたくない。いろんなものを持っている方が、男役としてすてきに見えると思う。すべてに対し、ゆっくりゆっくり、歩んでいきたい」

 自分を受け入れられるようになった。強さを胸に、自分のペースで夢へ向かう。

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