宙組新トップスター凰稀かなめが演技で、ビジュアルで、魅せる。お披露目公演となる「銀河英雄伝説@TAKARAZUKA」(兵庫・宝塚大劇場、8月31日~10月8日)では、作家田中芳樹氏の人気SF小説を原作にし、銀河帝国の名将ラインハルトを演じる。端正な顔立ち、スラリと伸びた肢体に映える軍服姿。役柄の特長である長い金色の髪は、メッシュを入れ「ウルフのイメージに」。感性の人である新トップは、心のアンテナに導かれるままに進む。東京宝塚劇場は10月19日~11月18日。

 モダンでスタイリッシュ-。5組中、最後にできた宙組を、今作の演出家、小池修一郎氏はこう位置づける。細身で長身(173センチ)、整った中性的な顔立ちの新トップの個性そのもの。凰稀の武器は、現代的で粋な感性でもある。

 「どういう男役に-とか考えずにきました。作品ごとに発見した新しい自分をお客さまに見ていただいてきました」。トップになっても変わらない。「(新しい宙組も)これからみんなで作っていきたい」。仲間を信じ、気負いはない。

 そんな新リーダー率いる宙組と、お披露目の今作はぴったり。82年刊行から累計売り上げ1500万部の人気SF小説が原作。未来の銀河を舞台に、銀河帝国と自由惑星同盟の戦い、人間模様を描く。カリスマ的名将ラインハルトを中心とした群像劇。長身ぞろいの宙組男役が軍服で勢ぞろいする“軍服の男祭り”だ。

 「作品が決まって漫画、小説、アニメDVDを見て、すごく熱心なファンがいることも知りました」

 とりわけ、映像の声のトーン、キャラクターのイメージが強く残ったという。凰稀は小池氏にも意見を伝え、役を作っている。

 小説でいえば、2巻までのストーリー。原作通りならば、新娘役トップ実咲凜音演じるヒロイン・ヒルデガルドとのロマンスが出てこないため、田中氏と折衝しながら、小池氏がオリジナル版の要素を盛り込む。

 「(主人公は)喜怒哀楽の激しい男だ、と。普段は冷静ですが、盟友キルヒアイスの前なんかだと変わる。宝塚版は野心、苦しみが濃く描かれると思います」

 内面はもちろん、ビジュアル面にも凰稀ならではの感性が生かされる。主人公は、細身の凰稀によく似合う軍服姿で、金色の長髪。特に髪形にこだわった。

 「1歩間違えると、軍服に金髪のロン毛で宝塚なら(ベルサイユのばらの)オスカルになってしまう。漫画では、オスカルっぽかった。だから、ウルフっぽい髪形の色具合、メッシュの入れ方を考えました」

 ポスター写真では瞳が青く光る。ブルーのカラーコンタクトだ。「なかなか、いい男になったんじゃないですか(笑い)」。ただ、7月半ば、お披露目会見で、一部ナンバーを披露し、意外な「敵」と遭遇した。

 「トップさんのライトって全然違う! カラコンだと前が見えない。これじゃ、私の視力が…と思ったので、メークで工夫していきたいと思っています」

 マイペースを崩さない凰稀も、思わぬ形で立場を実感した。宙組は大空祐飛、野々すみ花のトップコンビが退団し、13年目の凰稀がトップ、娘役トップには4年目の実咲が就き、雪組から緒月遠麻、花組から朝夏まなとらが異動。新しい血が入り、生まれ変わった。

 「穏やかに活気づいています。けいこ場でもそれぞれが、別の人の役柄に意見もします」。凰稀も子役の場面では、子役を演じる下級生に実演してみせる。

 上下関係にとらわれない空気感。凰稀は最近、実咲のものまねをして、笑わせている。「(実咲は)しっかりして、勘のいい子ですけど、不思議ちゃん。彼女の癖が見えてきたので、顔マネとかやっています」。

 前トップの大空から得た金言が胸にある。凰稀は、遠い目をして話し出した。

 「大空さんが『(凰稀は)すごく人に合わせてくれるよね。だけど、トップになったら、自分が合わせてもらう方の立場になるから、ちゃんと分かってもらえるように。みんなを、自分を信じて』と言ってくださった」。仲間を信じ、自分の心、感性に正直に歩めばいいと、大先輩から背中を押してもらった。

 「今は、下級生にいたるまでキラキラしていてほしいと思う。もっと、いっぱいいっぱいになるかな、と思っていたんですけど、逆に、みんなに包み込まれている感じです。なんだか、優しい空気が流れている」

 酷暑の中のけいこ。体調管理にも余念がない。

 「すぐのどを痛めるので、乾燥するからクーラーは苦手。でも、下手したら熱中症になっちゃうんで、すいかを食べています。水分補給にいいって聞いたので、毎晩食べて寝ています」

 素直に他者の意見を取り入れるのも、凰稀の長所。すいかには、デトックス効果もあるといわれる。そんな話題を振ると「そう! それ、それ、それ、それ、それ! これいいよって聞いたら、取り入れようって思うんですよね」。美形ゆえ、一見クールに見えるが、素直でちゃめっ気もたっぷり。青年の肉体に少年の心を宿した新トップが、本拠地でセンターライトを浴びる。【村上久美子】

 ◆銀河英雄伝説@TAKARAZUKA(脚本・演出=小池修一郎氏) 作家・田中芳樹氏による人気SF小説が原作。82年に第1巻が刊行され、累計セールス1500万部超のベストセラー。未来の銀河系を舞台に、銀河帝国軍と自由惑星同盟軍の戦い、人間ドラマを描き、架空の歴史小説風なテイスト。突如現れた名将・ラインハルト(凰稀)を中心に、宝塚版では、盟友のキルヒアイス(朝夏まなと)、女戦士ヒルデガルド(実咲凜音)や、ラインハルトと対をなす中心キャラクターのヤン・ウェンリー(緒月遠麻)らによる群像劇的要素も濃い。昨年から今年、俳優松坂桃季、歌手河村隆一らの主演で何度か舞台化されている。

 ☆凰稀(おうき)かなめ 9月4日、神奈川生まれ。順心女子学園中を経て00年「源氏物語 あさきゆめみし」で初舞台。雪組配属。05年7月「霧のミラノ」で新人公演初主演。06年7月「YoungBloods!」などでバウ主演も。09年4月、星組に組替え。昨年2月、宙組へ移る。今年1月にはバウ・青年館公演「ロバート・キャパ 魂の記録」に主演し、戦場カメラマンを熱演した。身長173センチ。愛称「かなめ」。

arrow
arrow
    全站熱搜

    neko Chan 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()