あの名作が、約20年ぶりに宝塚大劇場へ帰ってきた。「風と共に去りぬ」。南北戦争で傷ついた人々が、明日への希望を胸に立ち上がる力強い物語。宙組トップスター凰稀(おうき)かなめの演じるしぶいレット・バトラーが、舞台上で魅力を放っている。

 「死にそうな状況になっています……」。けいこが始まってすぐの会見で、凰稀はこう不安を口にした。

(1)凰稀「いままでやってきたことをゼロに」

2013年10月15日

写真:スカーレット(朝夏まなと)の元を去っていくレット・バトラー(右、凰稀(おうき)かなめ)

スカーレット(朝夏まなと)の元を去っていくレット・バトラー(右、凰稀(おうき)かなめ)=27日午後、兵庫県宝塚市、伊藤菜々子撮影

 「深さや大きさ、心のゆとりを表現するのが難しい。男役として、いままでやってきたことをゼロにして取り組まないと」。新たな役と格闘し、産みの苦しみにぶち当たる姿が垣間見られた。

 だからだろうか、トップ就任後に何度も「風共」の上演話が持ち上がったが、断ってきたと明かす。「いまの自分では無理だと思っていた。いま演じるのも運命ですね」

 凰稀自身、バトラーとスカーレットの2役を演じるのはどうか、と考えたという。ファンからも「スカーレットとバトラーの両方が見たい」という手紙をよくもらっていた。だが、これまでにこの2役を役替わりで演じたスターはいない。

 結局かなわぬ夢となり、バトラー役とがっぷり向き合うことに。冷静で端正な立ち振る舞いから嫉妬に狂う荒々しさまで、幅広いバトラー像を自在に演じる。

(2)初演バトラー役の榛名が演技指導で下支え

2013年10月15日
写真:初演(1977年、月組)榛名由梨(右)と順みつき初演(1977年、月組)榛名由梨(右)と順みつき(C)宝塚歌劇団

 この作品は、1977年に月組で初演されたとき、ファンの間で「ひげ論争」が巻き起こったことでも知られる。トップスターにひげをつけさせるなんて。ファンは怒り、鳳蘭らスターたちも抵抗した。「宝塚をどない思ってんねん!」。内部でもぼろくそに言われたと脚本・演出の植田紳爾は苦笑いする。

 榛名由梨が主演で初めてひげをつけて以来、鳳や麻実れい、杜けあき、天海祐希、麻路さきらがバトラー役になりきってきた。今回は1994年の天海版。「できるだけ『男臭く』を念頭に置いた。昔のスターたちはもっと男を強調していた」ともう一人の演出の谷正純はいう。

 確かに凰稀の持ち味は自然体。「そこからの脱却が課題」と植田。今回は榛名が演技指導として稽古に加わり、芝居を下支えしている。

 スカーレット役は、七海(ななみ)ひろき(27日まで)と朝夏(あさか)まなと(28日~11月4日)の役替わり。スカーレットが思いを寄せるアシュレは、本公演で退団する悠未(ゆうみ)ひろ(28日~11月4日)がりりしく演じている。11月4日まで。(谷辺晃子)

(3)和央「包容力を出す難しさが半端ではない」

2013年10月15日
写真:和央ようか岩村美佳氏撮影

 月の雫(しずく)を ほのかに浴び~

 主題歌「君はマグノリアの花の如く」が大好きで、いまでも口ずさむというのは2004年、全国ツアーでバトラー役を演じた宙組の元トップスター和央(わお)ようか。「メロディーが切ないんです。いまも全部歌えますよ」

 現役時代は、長身を生かした包容力のある男役で圧倒的な人気を誇った。約6年というトップ在任期間は、近年では異例の長さ。そんな和央でもこの作品には特別な思いがあったという。「宝塚の代表作。その歴史にわたしが入るなんて恐れ多くて、という感じだった」と振り返る。

 映画では、ひげをたくわえたクラーク・ゲーブルが渋く重厚に演じたバトラー役。「器の大きな方すぎて、包容力を出す難しさが半端ではなかった。頑張ったらかっこよくないし、ハードルが高かった」と役作りに悩んだことを明かす。

 凰稀かなめの率いる宙組公演はまだ、観劇していない。「必ず行こうと思っている。一ファンとして楽しみたい。きっとかっこいいんでしょうね」

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    neko Chan 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()