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リラの壁の囚人たちでエドワード・ランス役を演じる凰稀かなめ(右から2人目)とポーラ・モラン役の白華れみ(左から3人目)(撮影・宮崎幸一)

 星組準トップスター・凰稀かなめが、初のバウ主演作「リラの壁の囚人たち」(18日まで)で新境地を開拓した。第2次世界大戦中、ドイツに占領されたパリでレジスタンス活動に従事する難しい役どころ。22年前、涼風真世主演で上演され話題となった作品で、今回もすでにチケットは完売だが、凰稀はその人気におごることなく、丁寧に役を作ってきた。「どうにでも役が作れる本当に難しい作品。でも私らしく突き詰めて突き詰めて演じきりたい」と真剣なまなざしで語った。

 憂いを帯びた横顔、陰を背負った雰囲気。出生の秘密を抱え、何げない会話が無性に優しい…。何ともたまらない魅力を抱えた男性像だ。スカッとした男を演じれば、たちまち周りをとりこにするタイプの男役なのに、今回の凰稀は憂いを携えた役どころで新境地を開拓した。

 「お稽古場でどんどんやりたいモノが変わってきましたね。最初はシビアな物語の中の恋愛部分をしっかり表現したい、と思ったけれど、やっていくうちにやっぱり時代背景をちゃんと描いて男としてのシンの強さとかを表現したいと思ってきた。本当にすごく難しい」。

 同作は1988年(昭63)、後に月組トップスターになる涼風真世主演で初演。ファンの間では根強い人気のあった作品で、今回が22年ぶりの再演だ。「ファンの方や上級生の方からも“すごくいい作品だよ”って言われたんですよね。でも、当時のそのままやってしまってはダメだし、もっと自分で突き詰めて突き詰めて…って感じでした。すっごい難しかった」と役へのアプローチの難しさを振り返った。

 当時のビデオも見るには見たが、状態が悪いものしか入手できなかった。「逆にそれが良かったかもしれません。遠目に映っているもので、どなたが演じているのかも分からないぐらいの映像だったし。しっかり見ちゃうと、どうしても演じた方の印象が強くなってしまうので」と、ファンの印象より自分の感性を優先した。

 凰稀にとっては、これが本格的なバウ初主演。雪組時代「Young Bloods!! 魔夏の吹雪」(06年)「凍てついた明日 ボニー&クライドの邂逅」(08年)で主演はしたものの、これはワークショップで若手の勉強会の意味合いが強かった。東京進出も今回が初めてだ。

 「主演ということの緊張感は変わりませんが、やっぱり青年館(東京・日本青年館)で主演するっていうのは大きいですね。すごくうれしいことなんですけど、その分“もっともっといい作品にしなきゃ”って思う気持ちが大きい」とプレッシャーをエネルギーに変えている。

 「男役10年」と言われる世界で丸10年を過ごし、「何かを得た気はするけれど、言葉にするのは難しい」と多くは語らず笑ってやり過ごした。その余裕こそが「男役の色香」といわんばかりだ。

 今回は花組から異動してきたばかりの白華れみが、ヒロインを務めるのも話題。「正直、彼女はすごくしんどいと思いますよ。組替えしてきて、いきなりヒロインでしょ? もちろん、私とこうやって組んでお芝居するのも初めてですし。でも、彼女には本当に伸び伸びやってもらいたいですね」と目を細めていた。

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    neko Chan 發表在 痞客邦 留言(0) 人氣()